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【社会】

認知症トラブル マンション切実 高齢住人増加、孤立も

高齢姉妹が暮らしていた部屋。食べ残しなど大量のごみに埋もれていた=2016年8月、大阪市内で

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 マンション住人の高齢化に伴い、認知症になってごみ出しができなかったり、ぼや騒ぎを起こしたりといったトラブルが目立っている。周囲が異変を見過ごし、放置される人も少なくない。子どもの独立などを機に移り住んだ夫婦が孤立し、問題が起きても気付かれないといったケースもある。

 「助けて…」。二〇一六年八月の深夜、大阪市内の八十代の姉妹二人が暮らすマンションの一室から一一〇番があった。救急隊員が駆けつけると、室内は空き缶や食べ残しなどの大量のごみに埋もれていた。妹は脱水症状で意識が混濁し、そばで認知症の姉がおろおろしていた。

 ともに命に別条はなかったが、クーラーが壊れた部屋は閉め切った状態で異臭がしており、訪れた地域包括支援センターの職員は「一日遅かったら、二人とも亡くなっていたかも」と振り返る。

 支援センターは部屋を所有する妹の了解を得て、業者に頼み計二十トンのごみを一週間かけて処分。姉妹を施設に移し、部屋は成年後見人を付けて売却した。

 マンション住民への説明会では、姉妹を案じる声があった一方、「資産価値が下がる」などの苦情も出た。支援センターの職員は「昔はよくいたおせっかいなご近所さんが消え、支援につながりにくくなった」と話す。

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 認知症にかかわるトラブルはごみ出しだけではない。棟内や外をうろうろしたり、水回りの管理ができず漏水を起こしたりするなどさまざまだ。

 マンション管理業協会によると、ガスこんろの上に電気炊飯器を置いて調理をしようとしてぼや騒ぎを起こしたり、不安を感じて管理人に何度も相談して困らせたりした住民もいる。

 マンションでの高齢化は進む一方だ。一三年度の国土交通省の調査では、世帯主を年代別でみると、六十代の居住者が31%と最も多く、七十代以上は19%。六十代以上が半数を占め、五年前より約10ポイント増えた。対照的に、五十代や四十代は減っている。

 高齢者のライフスタイルの変化も見逃せない。都市部の高齢夫婦は、子どもが独立すると、一軒家を処分し、マンションに移り住むケースが増えている。

 都内の民生委員は「マンション生活は快適な半面、『地縁』が薄くなり、新たな近所付き合いが必要だ。困ってからでは遅い」と心配する。

 トラブルが表面化した場合、理事会や管理会社が対応するが、限界がある。「親族に協力を求めて連絡しても拒まれ、連絡すら取れないこともある」(管理業協会)

 東京都健康長寿医療センター研究所の粟田主一(あわたしゅいち)研究部長は、四月には全国の自治体に設置される認知症初期集中支援チームの活用を訴える。「住人がおかしいと感じて支援チームに連絡すれば、福祉職員らが何度も話を聞きに来る。当事者と早期に接触して信頼関係を築き、受診を促したりする支援が必要だ」

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