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【社会】

核禁止条約 地方113議会「署名を」 政府に転換迫る

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 核兵器を全面的に違法化する核兵器禁止条約が国連で採択された昨年七月以降、日本政府に条約への署名や批准を求める意見書が少なくとも百十三の地方議会で可決され衆参両院に提出・受理されたことが、両院事務局と地方議会への取材で分かった。大半が安倍晋三首相にも宛てられている。 

 条約は非核保有国が主導し、昨年九月に各国の署名が始まったが、米ロなどの核保有国は反発。被爆国として核保有国と非保有国の「橋渡し役」を自任する日本政府は「条約が亀裂を深める」と反対しているが、方針を転換し条約推進の先頭に立つよう迫った形だ。

 署名を求めたのは岩手県議会のほか、市町村議会では被爆地の広島、長崎両市を含む二十三都道府県の百十二議会。うち十六議会は署名までの間はオブザーバーとして参加するよう要求した。いずれも条約が採択された昨年七月七日以降に可決され、衆参両院事務局が受理したものを、共同通信が内容別に分類した。

 これとは別に、全国市議会議長会のまとめや広島、長崎の被爆者団体によると、少なくとも十六議会が国会ではなく安倍首相に提出。可決しても提出していない議会や、提出後に受理の手続きが終わっていないものもあるとみられ、今後増える可能性がある。

 岩手県議会は、条約は「国際人道法に照らしてその違法性を明確に述べている」と指摘。神奈川県南足柄市議会は、条約に貢献した非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN(アイキャン))が昨年、ノーベル平和賞を受賞したことを「条約こそが人類を救う本流であることの国際的な証しだ」と強調した。

 政府は、条約への反対理由に北朝鮮情勢の緊迫化も挙げているが、長崎市議会は「安全保障上、核兵器が必要だと言い続ける限り核の脅威はなくならない」と指摘。米国の「核の傘」に依存する政府に対し、宮城県美里町議会は「条約に背を向けず、条約の立場に立って粘り強く核保有国を説得すべきだ」と訴えた。

 一方で三重県菰野(こもの)町議会は、核廃絶には「核兵器の拡散防止を徹底し削減を着実に進めることが、現実的には最も重要」と言及。その上で、被爆国の責任として署名を求め、広島市議会も核廃絶のためのリーダーシップを取るよう迫った。

 このほか、日本政府に署名までは要求しないが、各国が条約に参加するため橋渡し役や積極的な役割を果たすことを求める意見書も八議会が可決し、国会に提出した。

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◆可決へ被爆者が奔走

 核兵器禁止条約への署名や批准などを日本政府に求める意見書を可決した地方議会が最も多かったのは岩手県だった。被爆者団体が中心になって議会に働き掛けた結果だ。県議会に加え、三十三市町村のうち二十四議会が可決しており、被爆者団体の担当者は「残りの人生を条約に懸ける被爆者の思いが伝わったのでは」と話す。

 岩手県原爆被害者団体協議会(岩手県被団協)によると、活動を始めたのは条約が国連で採択された直後の昨年八月。県内全ての議会に意見書案を送り、要請があれば県内に住む被爆者らが出向き、条約の意義や県内被爆者の実態などを説明して回った。

 下村次弘(つぎひろ)事務局長(77)は「条約交渉に不参加の日本政府への危機感から、県被団協で独自に動いた」と説明。盛岡市など保守系議員も含め全会一致の議会もあった。父親が被爆者の下村さんは「動けば必ず結果は出る。他県でも積極的に地方から世論を高めてほしい」と期待。岩手の例を受け、広島の被爆者団体も同様の働き掛けを検討している。

<調査の方法> 意見書は、衆院と参院の両事務局が受理し今月18日までに集計した分について、各地方議会に補充取材し、署名や批准を求めるものと、署名までは求めないが政府に積極的な役割などを求めるものに分類した。

<地方議会の意見書> 地方自治法99条に基づき、地方議会はその自治体の公益に関係する問題について、国会や関係省庁に意見書を提出できる。法的拘束力はなく、受理した側に回答義務もないが、住民代表である議会の総意として尊重され、地方の民意を国政に反映させる手段となっている。地方議会に意見書を出すよう提案する権利は、その議会の議員に認められている。

<核兵器禁止条約> 核兵器の開発や保有、使用などを史上初めて全面的に禁止する条約。前文で核兵器使用による被爆者の受け入れ難い苦しみに留意すると明記した。核兵器使用は国際人道法に「一般的に反する」とした1996年の国際司法裁判所の勧告的意見を踏まえている。条約制定の賛否を問う投票では122カ国・地域の賛成で採択された。50カ国・地域が署名し、批准の手続きを終えてから90日後に発効する。

 

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