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【社会】

ゲレンデ 無数の噴石 避難先 天井突き破る

一部のスキー客らが避難した山頂付近のレストラン。天井には噴石によるとみられる穴が開いている=23日、群馬県草津町で(山崎隆さん提供)

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 「死ぬかと思った」−。立ち上る黒煙。ゲレンデに降り注ぐ無数の噴石は、逃げ込んだ建物の天井も突き破っていた。警戒レベルが昨年下がっていた群馬県の草津白根山が二十三日、突然噴火した。草津国際スキー場でスキーを楽しんでいた人たちの脳裏には、六十人を超える死者・行方不明者を出した御嶽山(おんたけさん)(長野・岐阜県)の噴火がよぎった。(唐沢裕亮、谷岡聖史、菅原洋、佐藤圭)

 「一瞬、雪崩かと思ったが、黒煙だったので爆発と分かった」。午前十時ごろ、山崎隆さん(68)=東京都府中市=が山頂駅でロープウエーを降りると煙が目に飛び込んだ。すぐに無数の噴石が飛んできたため、四つんばいになり、スキー板で体を守った。

 中には人の頭ほどの大きさの石も。「このままでは死んでしまう」と、近くにあったリフトの支柱の陰に隠れた。パトロール隊員の指示で逃げ込んだレストランの天井は噴石で複数の穴が開いていた。「五十年近くスキーをしていてこんなことは初めて。危なかった」と振り返った。

 東京都多摩市の鈴木克典さん(77)が乗っていた後続のロープウエーは緊急停止し、空中で二十〜三十分間取り残された。「噴火の瞬間、ロープウエーのゴンドラの窓に『ボーン』と強風が当たるような音がし、横に揺れた。噴煙が上がり、噴火の爆音が何度か聞こえた」

 噴火口から二百〜三百メートルの場所にいた東京都小平市の会社経営、中川俊一さん(67)は「『ドーン』という音がした方向を見ると、白い噴煙が上がり、黒い噴石がすごい勢いで無数に降ってきた」とこわばった表情で語った。中川さんは滑りだす前に山頂レストランのトイレに寄った。「寄らずにもう滑っていたら、噴石が避けられなかった。運が良かった」と振り返った。

 山頂のリフトに乗っていた東京都江戸川区の会社員金子直樹さん(35)は、尾根の向こうに噴煙が見えると「まずい」と思い、一メートルほどの高さから飛び降りて林の中に避難。噴石がリフトの支柱にカンカンと当たる音が聞こえた。

 草津白根山には複数の噴火口がある。「山中で一晩過ごすことも覚悟した。もし他の噴火口も誘発されていたら、ひとたまりもなかった」と張り詰めた表情で振り返った。

 「今朝はいつもより硫黄臭が強い」。何度もスキー場を訪れていた横浜市の自営業佐藤初子さん(76)は噴火の前に長男と話していた。その後、ロープウエーに乗った際に噴煙を見た。佐藤さんによると、噴石で割れたガラスで手を切った男性もいたという。

 東京都葛飾区の蔵田道子さん(69)は「スキー板を履いていたら『ドーン』と爆発音が聞こえ、振り返ると噴石がバラバラと落ちてきた」。御嶽山の噴火が頭をよぎり、三十メートルほど先のレストランまで全力で走って避難。「白根山は噴火警戒レベルも下がっていたので、まさか噴火するとは」と驚いていた。

 友人と来ていた東京都杉並区の飲食店経営、神咲(かんざき)響さん(24)はリフトに乗る直前、「噴火した」との場内アナウンスを聞いた。「避難しろとは言っていない」と気にせず乗ると、妹の携帯電話からメッセージが。「お兄ちゃん生きてる?」。リフトを降りると、「雪崩の危険性があるので屋内に避難してください」との場内アナウンスが鳴り響いた。ようやく友人と「やばくない?」と顔を見合わせたという。

 

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