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【社会】

熊谷6人殺害 無罪主張 さいたま地裁初公判

ナカダ被告

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 埼玉県熊谷市で二〇一五年九月、小学生二人を含む六人が殺害された事件で、強盗殺人罪などに問われたペルー人のナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(32)の裁判員裁判初公判が二十六日、さいたま地裁(佐々木直人裁判長)であった。罪状認否でナカダ被告は意味不明な発言をし、弁護側は無罪を主張する方針を示した。

 弁護側は「被告は事件について語れない」と、認否についての意見を留保。その上で「犯罪が成立するとしても、被告は心神喪失しており、無罪を主張する予定」と述べた。

 検察側は冒頭陳述で、被告が金を奪う目的で六人を殺害し「遺体を隠していることから違法性を認識していた」と指摘し、「完全責任能力がある」とした。

 被告は逮捕時、「やっていない」などと容疑を否認。二度行われた精神鑑定は異なる結果が出ており、刑事責任能力の有無が争点となる。今後、被告人質問など十一回の審理を経て、判決は三月九日の予定。

 起訴状などによると、被告は一五年九月十四〜十六日、熊谷市内の住宅三軒に侵入し、田崎稔さん(55)と妻美佐枝さん(53)、白石和代さん(84)、加藤美和子さん(41)と長女の美咲さん(10)、次女の春花さん(7つ)=いずれも年齢は当時=を包丁で刺すなどして殺害。現金や車などを奪ったとされる。

 被告は事件直前の九月十三日に、任意で事情聴取されていた熊谷署から逃走。その後、署周辺では外国人による住居侵入事案の通報などが相次いだが、県警は被告を発見できず、「殺人事件に至ると想定できなかった」と住民への注意喚起もしなかった。事件後、県警は防災行政無線などを活用して情報提供することを柱にした協定を、県内全市町村と締結した。

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◆妻子失った男性「真実を話して」

 「真実を話してほしい」。事件で妻の加藤美和子さんと娘の美咲さん、春花さんを失った男性(45)はこの日の初公判を前に、動機など真相が見えない苦しみにもがき続けてきた胸の内を語った。被告が真実を語ることを願い、被害者参加制度を利用してすべての公判に足を運ぶつもりだ。

 「まだ、片付けられない。あの日から時間が止まったままなんです」

 事件から二年がたとうとしていた昨年八月下旬、男性は事件現場となった自宅で再び暮らし始めた。家族写真など当時のものはほとんど片付けておらず、カレンダーもあの日のままだ。

 毎晩、家族四人で川の字で寝た寝室で夜を過ごす。「一人なんだな」。考えないようにしていても孤独感が襲ってきて、今も睡眠導入剤が手放せない。仕事にも復帰できず、「まともな生活を送れていない。乗り越えなきゃいけないとは思っているけど…」と葛藤を繰り返してきた。

 被告は逮捕時、「やっていない」などと否認し、事件の全容は解明されていない。「動機も状況も真実をすべて語ってほしい」。失った娘と妻のため、そして自分が前に進むため…。男性は真実を求め、法廷で被告を見つめ続ける。(西川正志)

 

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