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【社会】

ビートルズ「幻の映像」公開を 市民団体が東京高裁で係争中

1966年6月30日、ものものしい警備の中で行われたビートルズ(右上)の公演=日本武道館で

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 英国のロックバンド、ビートルズが一九六六(昭和四十一)年に来日公演した際、警視庁が撮影した記録映像の全面公開を巡って、名古屋市の市民オンブズマンが東京都と争っている。ファンの間で「幻の映像」とされる三十分強のモノクロフィルムの公開をオンブズマンが求めたのに対し、都側は「(警察官やファンの顔は)個人情報に当たる」として拒否。オンブズマンは昨年末の東京地裁判決でも敗訴したため、控訴に踏み切った。 (豊田雄二郎)

 判決などによると、フィルムはビートルズ来日(六六年六月二十九日〜七月三日)を三十五分三十秒に編集したもの。警視庁は警備のため数千人の警察官を動員したとされ、メンバー四人が降り立った羽田空港や公演先の日本武道館、宿泊先周辺の車両検問やパトロール、観客の状況などを収めた。四人の到着や演奏、移動、搭乗の様子も含まれている。

 半世紀近く「幻の映像」と言われていたが、二〇一四年、フィルムが警視庁に保管されていることが報道で明らかになった。オンブズマンらでつくる名古屋市中区の情報公開市民センター(理事長・新海聡弁護士)は一四年と一五年の二回、映像の全面公開を都側に求めた。

 都側は「(映像には警察官やファンの)顔が記録され、特定の個人を識別することができる」として認めなかった。センターは一七年一月に非公開決定の取り消しを求め、東京地裁に提訴。地裁は都側の主張を支持し、昨年十二月二十日付で訴えを退けた。

 直ちに東京高裁に控訴したセンターの新海弁護士は「来日時の映像は広く報道や商品化され、歴史の研究対象でもある。五十年前に撮影された映像で特定の個人を識別することは困難。何でも個人情報とする風潮も疑問だ」と話す。

 新海弁護士によると、提訴前、都側はオンブズマン側が七十万〜八十万円の実費を払うことで観客らの顔にモザイク処理を施して映像を公開する手法も提案したという。だが、都側は本紙の取材に対し、現有の機器でモザイク処理は難しいとして、一切公開しない考えを示した。

◆文化的価値 計り知れない

<ビートルズ来日に詳しい音楽評論家宮永正隆さんの話> 記録映像が持つ文化資料的価値は計り知れない。コンサート映像で観客の顔にモザイク処理を施したものは見たことがない。公開したとしても「写っている一般人が不利益を被る可能性」はなきに等しい。ミュージシャンやファンの意向とは別の「上から目線」または「事なかれ主義」が今も厳然と存在している図式だ。ビートルズ来日時に「席を立つと警察官に座らされた」「英国国旗を掲げただけで警察官が飛んできて破った」という他国では考えられない締め付けがあった当時と何ら変わっていないと感じる。

 

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