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【社会】

15歳、残酷な傷「苦しんだ」 旧優生保護法 国提訴

原告の60代の女性。自分で縫った雑巾について話してくれた=宮城県内で

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 「不良な子孫の出生防止」を名目に、障害者らに不妊手術を強いた旧優生保護法。子どもを産み育てる基本的人権を奪われたとして、四十年以上前に手術を強制された宮城県の六十代女性が三十日、国に損害賠償を求めて提訴した。「障害者はいなくなればいいという思想であまりに残酷な手術」と義理の姉。支援者は「全国の被害者救済の第一歩に」と司法に期待を寄せた。

 「お姉さん、頑張ってね」。不妊手術を強いられた六十代の女性がつぶやいた。約四十年間生活を共にしてきた義理の姉が、知的障害のある女性に代わり、訴訟の準備を進めてきた。「(当事者は)苦しんで、ひた隠しにして生きてきた」。姉は三十日に開いた提訴後の記者会見で障害者差別の解消を訴えた。

 「かわいいでしょ」。今月下旬、宮城県の自宅で女性は自分で縫った雑巾を手に話した。緑やオレンジなど色とりどりの糸で刺しゅうした星やネコ。福祉事業所で得意の洋裁をしたり介護施設で友人と折り紙や体操をしたりして毎日を過ごす。提訴した三十日の朝は「私はちゃんと(留守番)しているから」と姉を見送った。

 十五歳で不妊手術を強いられた。へその下には縦約八センチの傷が残るが、本人に手術の記憶はない。姉は「手術の恐怖で忘れたのでは」と推し量る。術後に腹部の痛みを訴え、怖さからか、受診した婦人科では数人がかりで押さえ付けなければならないほど暴れた。

 「あまりに残酷だ」。姉は県に情報開示を求め、「遺伝性精神薄弱」との診断で手術されたことが昨年七月、分かった。一歳の時に手術を受け、麻酔の影響で知的障害になったと家族から聞いており、説明が食い違う。国も「当時は適法だった」「実態調査は考えていない」と繰り返すだけ。「裁判をしなければ何も変わらない」と提訴を決めた。

 女性は、食器を洗ったり洗濯物を畳んだりと家事の手伝いもでき、簡単な日常会話は可能だ。姉も「個性を生かすことができれば、障害があっても明るく生きられる」と話す。

 インターネットに書き込まれる、障害者への偏見や中傷の言葉。旧優生保護法が改定されても「障害者はいなくなればいい、生きていては良くないという思想は消えていない」と感じる。「今まで声を上げられなかった方々も、勇気を持って声を出してほしい」。障害者が立ち上がり社会が変わることを願った。

◆「被害者救済の一歩に」支援者ら司法判断期待

 「全国にいる被害者を救済する第一歩になってほしい」。三十日午前、旧優生保護法下で不妊手術を強制された原告の支援者ら約三十人が「国は謝罪と補償を」と書かれた横断幕を掲げて仙台地裁前に集まり、国への憤りや司法判断への期待を口にした。

 障害者支援団体代表の永井康博さん(58)は「時間が経過するほど、責任の所在は分かりにくくなる。国は早く姿勢を改めるべきだ」と厳しい表情。一九六三年に知的障害を理由に不妊手術を強いられたという宮城県の七十代女性は「提訴をきっかけに、他の被害者も声を上げてほしい」と話した。

 約十五年にわたって支援活動を続けてきた杉山裕信さん(51)は「やっとの思いで提訴までこぎ着けた。障害者の人権が守られる社会になってほしい」と訴えた。

 弁護団長の新里宏二弁護士は「国は当事者をずっと放置し続けてきた。裁判を通じ、差別されてきた人々への謝罪と補償を早期に実現したい」と語った。

 

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