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【社会】

自治体も「無届け施設」頼み 札幌11人死亡火災 運営実態確認へ

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 火災で十一人が亡くなった自立支援を掲げる札幌市の共同住宅「そしあるハイム」は、無届けの有料老人ホームだった可能性が出てきた。低所得で身寄りがない高齢者だけでなく、介護施設の整備が追い付かない自治体も無届け施設に頼らざるを得ないのが実情だ。高齢化が進む中、専門家は対策不足を指摘する。 

 ▼老人ホーム

 「社会福祉法上の無届けの無料・低額宿泊所か、老人福祉法上の無届けの有料老人ホームの可能性がある」。加藤勝信厚生労働相は二日の記者会見で、法的位置付けを確認して対処するとした。

 札幌市は二〇一六年一月、テレビの特集をきっかけにそしあるハイムの存在を認識。有料老人ホームに該当する可能性があるとみて四回にわたって実態を尋ねる調査票を送ったが、回答はなかった。運営していた合同会社「なんもさサポート」の藤本典良代表は「老人ホームじゃなかったから(回答しなかった)」とする。

 老人福祉法では、高齢者が入居し(1)食事(2)家事(3)介護(4)健康管理−のいずれかのサービスを行う場合は有料老人ホームとなる。自力での避難が難しい入所者が一定割合を超えるとスプリンクラーの設置義務が生じる。設備投資に費用がかかり、料金に跳ね返る。

 一方で、特別養護老人ホームは公費が投入され、利用者料金は比較的安い。その分人気は高く、待機者は約三十七万人(一六年四月時点)に上る。

 ▼身寄りなく

 施設不足に追い打ちをかけるのが高齢者の貧困化だ。「無年金」の人や、保険料の納付期間が足りず満額を受け取れない「低年金」の人は増加。生活保護受給世帯に限っても六十五歳以上の世帯が半数を超えた。今後、低所得で身寄りのない高齢者はさらに増える。

 こうした高齢者を事実上、支えているのが料金の安い無届けの有料老人ホームや無料・低額宿泊所などだ。厚労省によると、無届けホームだけでも全国千二百七施設(一六年度)。無届けのため行政のチェックは及ばず、安全性や質に問題がある施設も紛れる。

 ▼多大な費用

 自治体は実態を知りながらも頼る。〇九年に火災で十人が亡くなった群馬県渋川市の老人施設「たまゆら」も無届けホームだったが、東京都墨田区は受け入れ先を確保できず、たまゆらに生活保護受給者を紹介していた。別の自治体担当者も「多大な費用がかかるため、施設整備が追い付かない」と明かす。

 老後の住まいの問題に詳しい高齢者住宅財団の高橋紘士特別顧問は「今回のような問題が起きると、事業者を悪者視して『規制強化すべきだ』という議論になりがちだが、劣悪な施設がいっそう水面下に潜ってしまうだけだ」と指摘。「弱い立場の高齢者に住まいを保障する対策を着実に打っていくしかない」と話す。

 

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