東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 2月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

「大手町ビル」低層・横長のまま保存 再開発より活用

2018年は完成60周年。再開発ラッシュが進む大手町では貴重となった昭和の空間だ=東京都千代田区で

写真

 再開発ラッシュが続く日本経済の中心地、東京・大手町で築六十年のオフィスビル「大手町ビルヂング」が、「低層、横長」のレトロな姿をそのままに改修・保存されることになった。周辺では最古級の名物ビルで、三菱地所が長年、本社にしてきた。超高層ビルの谷間で、高度経済成長期の記憶を伝える役割を担う。 (神野光伸)

 大手町ビルは一九五八(昭和三十三)年に完成。国内初の全館冷房など当時としては最新鋭の設備を誇った。高さ三十一メートルで地上九階地下三階建て。約百四十の企業・団体のほか、商業テナント約六十店が入居する。三菱地所によると、東西約二百メートルの細長い敷地に立ち、その規模から、かつて「東洋一のビル」といわれたという。

 隣接する丸の内地区も含め、昭和に建てられたオフィスビルが続々と百〜二百メートル級の超高層ビルに建て替えられる中、低層で横長のレトロビルは存在感を放つ。大手町・丸の内地区のオフィスビルでは、重要文化財で見学施設になっている明治生命館(一九三四年完成)に次ぐ歴史がある。

 大手町・丸の内地区の明治時代からの大地主である三菱地所は、今年初めの本社移転に先立ち、これまでのような再開発ではなく「残して活用」することを考えた。今年中に改修に着手するが、鉄骨コンクリートの構造部には大きな手は加えず、階数もそのままにする。耐震調査で骨格の耐用年数が四十年近く残っていたことが判断の理由にある。補修工事して百年使える建物にするという。

 大手町・丸の内地区の再開発では、日本工業倶楽部会館(二〇年完成)、旧東京中央郵便局(三一年完成、現JPタワー)などが部分保存される一方で、多くのビルで全面建て替えが進む。

 大手町ビルのように現役のビルとして保存するのは珍しいが、三菱地所は「すべてのビルが建て替えではなく、サービスによって価値を高める方法がある」と説明している。

◆進む超高層化 街の「史跡」に

 「周りは高いビルばかりになったけど、その中で街の歴史を伝えるビルを残していくことは大切だと思う」。大手町ビルの開館と同時にビル内に花屋を出店した「長谷川商店」(東京都港区)の山田孝夫社長(59)は、こう話す。

 銀行や商社の本社、「財界総本山」と呼ばれる経団連会館などが囲む大手町ビルは、巨大ビジネス街の中心地にある。長谷川商店は、法人向けで実績を重ね、顧客には周辺企業の重役らも名を連ねてきた。

 ビル内の商業テナントでつくる大手町ビル商店会長も務める山田さんは「オフィス街と店を結び付けてくれたのが大手町ビルだった」と感謝する。

 大手町ビルは低層ながらも既存の小規模オフィスを活用しつつ、近年は中小のベンチャー企業を呼び込み起業家が集まる拠点となってきた。

 二〇〇二年の「丸の内ビル」の建て替え以降、国の規制緩和も後押しし、大手町・丸の内地区には百メートル以上のビルが三十棟近くできた。二〇年東京五輪・パラリンピックを見据え、高級ホテルの進出も相次ぐ。

 摩天楼となった大手町でのビル保存について日本建築家協会関東甲信越支部の加藤誠洋(のぶひろ)・保存問題委員長(52)は「開発優先のエリアでビルを残す決定は異例。都心のシンボル的なビルをどう残し、活用していくかの回答例になればいい」と評価した。

写真
 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報