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【社会】

「貧困撲滅」支援広がる 大手証券が基金 3団体に900万円

「子どもの貧困」問題の解決に取り組むピーシーズの研修会。支援者の育成の場になっている=東京都文京区で

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 貧困や環境対策、エネルギー問題などの解決に向け、国連が掲げた17分野の持続可能な開発目標(SDGs(エスディージーズ))への企業の取り組みが徐々に広がっている。大和証券グループ本社(東京都千代田区)はSDGsの一分野「貧困をなくす」ため、証券会社で初めて子どもの貧困問題に取り組む支援団体への寄付を始めた。 (木原育子)

 SDGsは、国際社会が持続可能な発展のために、二〇三〇年までに達成すべき目標だ。一五年の国連サミットで採択され、貧困問題など十七分野百六十九項目で具体的な達成基準を盛り込んでいる。

 大和証券グループ本社は国内で「貧困をなくす」という目標を達成するため、社会貢献活動を支援するパブリックリソース財団に「輝く未来へこども応援基金」を設けた。基金額は五年間で一億円。今年一月、子どもの貧困問題に取り組む都内の支援団体など三団体に計九百万円を支出した。

 日本証券業協会もSDGsに関する懇談会を設置し、業界全体として子どもの貧困対策などに力を入れ始めている。金融機関では融資の際、SDGsに取り組んでいるかを評価基準の一つに盛り込む動きもある。

 大川印刷(横浜市)は印刷業界で初めて、二酸化炭素の排出ゼロ印刷を始めたり、適切な環境で育てられた「森林認証紙」を使うなど、環境負荷の低減に力を入れる。

 外務省の担当者は「経済界も盛り上がっている。良い循環を生みたい」と説明。SDGs市民社会ネットワーク(台東区)の稲場雅紀専務理事は「企業PRの一環としてではなく、SDGs本来の趣旨に沿うようにアプローチする必要がある」と話す。

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◆NPO歓迎「分野超えた関与必要」

 大和証券グループ本社がSDGsの目標に沿って、子どもの貧困対策を支援する試みは、中田誠司社長(57)=写真=が主導した。「証券会社は資本主義の象徴のような存在。一方で、その資本主義は格差を生む。市場経済の恩恵を受ける会社として、社の利益を格差のひずみで苦しむ子どもたちの役に立ててもらいたいと考えた」と話す。

 中田社長が子どもの貧困問題に関心を持ち始めたのは二十年ほど前。娘が通う幼稚園の隣に、虐待などで親と暮らせない子どもたちが過ごす児童養護施設があった。施設で生活せざるをえない子どもが多くいることにショックを受けた。証券会社の営業マンとして忙しく働く中で「何かできないか」と思い、おもちゃやケーキなどを贈り始めた。

 昨年四月、社長に就任すると、社として本格的に支援する方針を決定。同社は最初の支援先として、基金に応募のあった百四件から、都内のNPO法人など三団体に計九百万円の支出を決めた。

 支援先に決まった団体からは歓迎の声が上がる。NPO法人「PIECES(ピーシーズ)」(文京区)は、貧困などが原因で孤立する子どもをサポートする人材の育成に力を入れる。児童精神科医で代表の小澤いぶきさん(38)は「子どもの貧困は構造的な問題。私が医療現場から飛び込んだように、さまざまな人が分野を超えて関わることが必要」と話す。

 子どもたちの学習を支援するNPO法人「Learning(ラーニング) for(フォー) All(オール)」(新宿区)代表の李炯植(りひょんしぎ)さん(27)は「大きな支援で大変ありがたい。質の高い学びのセーフティーネットをつくる」と決意を語る。

 このほか、子どもたちが家庭的な雰囲気で共同生活を送る「SOS子どもの村JAPAN」(福岡市)が支援を受ける。

<SDGs(持続可能な開発目標)> 「Sustainable Development Goals」の略。2001年に国連が策定した発展途上国向けのミレニアム開発目標(MDGs)が15年に達成期限を迎えたため、その後継として15年に国連サミットで採択された。17分野の達成目標は環境対策など、途上国だけでなく、先進国が取り組みを求められるテーマも多い。日本では17年に日本経済団体連合会(経団連)が活動指針に取り入れたことで広がりを見せている。

 

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