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【社会】

「手話は言語」広がれ 都内初の条例、江戸川区提案へ

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 東京都江戸川区は都内の自治体で初めて、手話を言語と認める手話言語条例案を20日開会の区議会に提案する。荒川区と都も同様の条例案を検討している。手話を言語と認めることで人々の理解が進み、防災や医療の分野などで手話による情報提供が充実するといった効果が期待できる。聴覚障害者団体からは歓迎の声が出る一方、さらなる普及の取り組みを求める声もある。 (唐沢裕亮、中村真暁)

 手話言語条例は二〇一三年、鳥取県が初めて制定。全日本ろうあ連盟によると、八日時点で十五県百十二市町に広がっているが、都内ではゼロだった。

 江戸川区の条例案では手話を言語と明記し、聴覚障害者らが手話で円滑に意思疎通を図る権利を尊重する。区内の事業者に対し、手話を必要とする人が利用しやすいサービスの提供や、働きやすい職場環境の整備に努めるよう促す。四月一日施行を目指す。

 条例案への意見公募には「ろう文化の歴史など、手話をとりまく社会的背景を説明する前文を付記してほしい」「区民ニュースの放送で、字幕か手話通訳をつけてほしい」など約四十件の意見が寄せられた。

 荒川区でも六月の条例制定を目指し、素案作りが進む。障害者福祉課は「手話への理解や普及啓発が進むことで、手話がどこででも使いやすくなる」と効果を期待する。都は六月制定を目指す障害者差別解消条例で、手話を言語と位置付ける方針だ。担当者は「手話も言語であるという認識を広げ、その奥深さなどを理解してもらいたい」と話す。

 全日本ろうあ連盟の久松三二(みつじ)事務局長は、東京での条例制定の動きに「全国の自治体にも波及効果が期待できる」と指摘。「制定後は、地域の聴覚障害者団体などの意見を施策に十分に反映させていく必要がある」と注文する。

◆「多様性認め合う契機に」

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 手話言語条例の制定について、一歳で聴力を失った東京都北区議の斉藤里恵(りえ)さん(34)=一期目=は「多様性を認め合うきっかけになる」と、条例を制定する自治体のさらなる広がりに期待する。

 斉藤さんは先月の夜中、インフルエンザで高熱に浮かされる長女(7つ)を前に、途方に暮れた。二人暮らしで「どうしたらいいか」と不安は増すばかり。医療機関に相談したかったが、手話による電話代行サービスは利用時間が限られ、夜遅くは利用できない。眠れない一夜を過ごした。

 乗車中の電車が突然停車しても、車内放送は聞こえず、状況が分からない。救急車を呼びたいときや、災害時に防災無線の内容を知りたいときも、現状では壁がある。だが、手話言語条例の制定が広がれば「手話の活用や啓蒙(けいもう)活動も進む」と期待する。

 例えば、手話による事故時や災害時の情報提供が一般化したり、手話サービスがもっと普及したり。実際、条例を制定した他県の自治体では、防災や医療分野で手話サービスが充実し、一般の人を含め手話を学ぶ機会も広がったとみる。

 「聞こえる人が聴覚障害について知る機会も生まれている。社会の多様性を推進させている」と斉藤さん。北区で条例制定に向けた活動を続ける。「高齢になると聞こえにくくなるなど、聴覚障害は誰にも起こり得る。条例制定の動きはさらに広がってほしいし、成立後も手話の普及に努めてほしい」としている。

<手話を言語と認める動き> 国際的には、2006年の国連総会で「手話は言語である」と定義した障害者権利条約が採択された。国内では11年に改正障害者基本法が成立し、「言語(手話を含む)」と記された。13年10月には鳥取県が手話言語条例を全国の自治体で初めて施行。国に手話言語法の制定を求める意見書は16年3月までに全1788自治体で採択された。

 

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