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【社会】

未到の地へ一歩 藤井五段、羽生二冠に公式戦初勝利

「朝日杯将棋オープン戦」で羽生善治二冠と公式戦初対局し、初手を指す藤井聡太五段=17日、東京・有楽町で(中西祥子撮影)

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 将棋界の第一人者を打ち破った−。中学生棋士の藤井聡太五段(15)と羽生善治二冠(47)の公式戦初対局。会場の東京・有楽町朝日ホールには全国から熱心なファンが詰め掛け、二人の天才棋士の戦いを見守った。

 対局場には大きなモニターが二つ設置され、六百人を超えるファンが観戦した。午前十時半に対局が始まると、先手になった藤井五段は絶え間ないシャッター音にひるむことなく、ゆっくりと飲み物を口に。その後、確かな手つきで飛車先の歩を進める第一手を繰り出した。

 会場には対局開始の一時間以上前から入場待ちの長い列。埼玉県戸田市から来た塚田来夢(らむ)君(9つ)は、藤井五段の活躍を見て将棋に興味を持ったという。昨年のクリスマスプレゼントは将棋盤と駒。父親から手ほどきを受けており「藤井くんに勝ってもらいたい」と目を輝かせた。その父親に留守番を頼み、塚田君のお供をした母親の妃奈(ひな)さん(37)も大の藤井ファン。「かわいらしくて強くて。この子もあんなふうになってもらえたら」とほほ笑んだ。

 仕事の出張に合わせて鹿児島県から観戦に訪れた大庭大輔さん(43)は、最前列のチケットを入手。「羽生さんが永世七冠を獲得した鹿児島での対局を見られなかったので、今回こそはと思った。熱戦を期待しています」と興奮気味に話した。

ふみもと子供将棋教室にある『羽生の頭脳』=愛知県瀬戸市で

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◆定跡書「羽生の頭脳」 藤井少年の礎に

 中学生棋士・藤井聡太五段の強さが築かれた背景には、敗れた羽生善治二冠が若き日に執筆した定跡書「羽生の頭脳」があった。(岡村淳司)

 『羽生の頭脳』は全十巻で、日本将棋連盟刊。さまざまな戦型の定跡(最善の手順)や、具体的な指し方を自身の見解を交えて教える内容。羽生さんがまだ二十代初めで書き上げたが、プロも参考にするほど高度な内容で「将棋を学ぶ者のバイブル」とも言われる。現在は文庫版も出た。

 藤井五段が五歳から小学四年まで通った瀬戸市の「ふみもと子供将棋教室」でも同書を活用。生徒は、強い相手が駒を減らしてハンディをつける「駒落ち戦」の定跡を覚えると、次に『羽生の頭脳』に挑み、将棋の基礎を身に付ける。

 だが指導者の文本力雄さん(63)によると、十巻まで終える前に教室をやめる子が多く、藤井五段は全巻を制覇した数少ない一人。同書の価値について「強い将棋ソフトが現れて指し手が一変したが、それを生かせるのは基礎があってこそ。『羽生の頭脳』は教室を開いた二十年前から使ってきたが、今も色あせることがありません」と話す。

 教室の本棚には同書が何セットもあり、貸し出しにも応じている。特に第一巻はぼろぼろで、長い年月で多くの子どもが読み継いできたことがうかがえる。

 藤井五段が羽生さんの才能を継ぐ存在だと確信している文本さんは、二人の初対局を楽しみにしていた。「羽生さんはものすごい人だが、聡太は対局が始まれば相手が誰でも動じない。こちらは黙って見守るだけです」と静かに語る。

 

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