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【社会】

<東京マラソン 駆ける>(上)まひ克服、4時間に挑む 埼玉・志木市 千葉豊さん(39)

右半身のまひを克服し、ランニングコーチや理学療法士のサポートを受けながら4時間切りを目指す千葉豊さん(中央)=東京都中央区で

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 3万6000人が都心を駆け抜ける東京マラソン(東京新聞など共催)が25日、開催される。「同じ病気の人の励みに」「震災で命を落とした人のため」−。12回目となる大会で、特別な思いを抱いて42.195キロに挑む3人のランナーを紹介する。

 病院のベッドで三日間眠り続けた。目を覚ました時、姉から告げられた。「豊は脳梗塞よ」。右半身がまひし、手足は動かなかった。

 埼玉県志木市の千葉豊さん(39)はトラック運転手だった六年前、荷物運搬中の宇都宮市で突然、視界が上下左右にぶれた。車を止めて休んだが、吐き気がし気分は悪くなる一方。救急車を呼び病院に運ばれたところまでしか記憶がない。

 母親も祖母も脳梗塞で命を落としていた。三代続けて同じ病に。「なぜ自分は生きているのか」と疑問が湧いた。「母がさんずの川から引き戻してくれたなら、何かしなくては」

 入院中に時間を惜しんでリハビリに励む千葉さんを、周囲は「ミスターストイック」と呼んだ。四カ月後の退院時には日常生活に支障がないほど回復。事務職で復職も果たした。歩ける距離が伸び、自転車にも乗れるようになった。

 「これなら走れるのでは」とランニングに挑戦。二〇一四年にはハーフマラソン、一六年には六時間の制限時間ぎりぎりながらフルマラソンを完走した。

 一年前、インターネットを通じて出会った脳梗塞特化型リハビリ施設の運営会社会長、早見泰弘さん(45)から「フルマラソンで四時間切りを目指しませんか」と提案された。成人男子の平均を超える四時間切りを目指す練習では、けがをするリスクも高まる。ためらいもあったが、「同じ病気の人に希望を持ってもらおう」と説得され決断した。

 寄付を募り、施設の理学療法士やランニングコーチ、管理栄養士らがチームを組んだ。初めは片足を引きずるような走り方だったが、今では半身まひとは分からないほど改善した。

 「興味のあることはやってみる。できたら自信になる」。今、こんな好循環を実感している。「百キロ走りたい。トライアスロンにも挑戦したい」と次の目標も見据える。

 「脳梗塞の患者は引きこもりがちだが、プラス思考になってほしい。自分の走る姿が他の患者の励みになれば」。チームのメンバーと思いを一つに本番に臨む。 (松村裕子)

 

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