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【社会】

日本発 生命の国際貢献 母子手帳、40カ国・地域に

ガーナで母親たちに母子手帳の試行版の感想を尋ねるJICAの専門家(左)=JICA国際協力専門員の萩原明子さん提供

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 国際協力機構(JICA)や民間団体が、日本独自の母子健康手帳(母子手帳)を海外に広める活動を四半世紀にわたって続けている。検討中を含め導入したのはインドネシア、カンボジア、ガーナなど、アジア、アフリカを中心に約四十カ国・地域。母子を取り巻く衛生環境の向上や健康の促進に役立っている。 (柚木まり)

 母子手帳の内容は同一ではなく、妊娠初期以降の母親の健康状態、乳幼児の状態、予防接種の記録を基本に、国ごとの医療、保健サービスに応じて変えている。発展途上で識字率が低かったり、言語が多かったりする国でも理解しやすいよう、妊娠初期の症状や授乳の方法などのイラストを多用している。

 JICAは一九九二年、インドネシアで本格的に普及活動を開始。九七年に国家プログラムに指定された。同国では助産師ら専門家が立ち会わない出産も珍しくない。二〇一〇年の調査では手帳を使ったグループは未使用のグループに比べ、専門家立ち会いの出産が約二倍、予防接種を受けた子どもの比率が約三倍と実績が裏付けられた。同国はこの経験をアフガニスタンなど別の国にも伝えた。

 こうした間接支援も含め、JICAはこれまで二十五カ国・地域で母子手帳の普及に関わった。ほかに一般社団法人「親子健康手帳普及協会」(東京都)やNPO法人「HANDS」(同)などが十数カ国で普及の支援にあたった。

 JICAの研修でガーナから来日していた保健行政機関職員のヴィヴィアン・オフォリ・ダンクワさんは「すべての情報が母子手帳の一冊にある。母親だけでなく夫や家族、みんなが健康を考えるきっかけになれば」と期待を込めた。

 インドネシアでの支援に長く携わるJICA国際協力専門員の尾崎敬子(おさきけいこ)さんは「小学校でしか学んでいない母親でも、手帳を活用してくれている。子どもがいかに健康に育っているかを、自信を持って話してくれた人もいた」と語る。

 母子手帳は「生命(いのち)のパスポート」とも呼ばれる。JICAの戸田隆夫上級審議役は、紛争が絶えないパレスチナからイスラエルに入る国境で、検問に並んでいた妊婦が産気づき、母子手帳を見せて越境を許される場面に遭遇した。「手帳を手にすることで人々が社会と結びつき、国や政府を信頼することにつながる」と強調する。

 安倍晋三首相は昨年末に東京都内で開かれた「UHCフォーラム2017」で、母子保健サービスの普及や感染症対策に総額約二十九億ドル(約三千百億円)規模の協力を約束。国会で審議中の二〇一八年度予算案に一部が盛り込まれている。

<母子手帳> 妊婦の健康状態を把握するため、厚生省(当時)が1942年に「妊産婦手帳」の配布を開始。当時は流産や死産、妊婦の死亡率が高く、結核による乳幼児の死亡も問題化していた。戦中で妊娠、出産に必要な物資が行き渡るよう、配給の記録も兼ねていた。48年に「母子手帳」に、66年から「母子健康手帳」に改称された。

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