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【社会】

亡き息子と… 座間の造形作家が詩集 悪質運転被害 厳罰化に尽力

共子さんは詩集を出版した=東京都日野市百草のいのちのミュージアムで

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 飲酒、無免許で暴走する車にはねられて死亡した息子の悲劇を繰り返すまいと、悪質運転の厳罰化を求める活動を続けた造形作家の鈴木共子(きょうこ)さん(68)=神奈川県座間市=が、事故直後から書きためてきた詩を一冊の本にまとめた。今は穏やかな気持ちで過ごしているという鈴木さんは「人には立ち上がる力があり、周りの支えもある」と、その時々の詩に込めた思いを振り返っている。 (林朋実)

 鈴木さんの一人息子零(れい)さんが事故で亡くなったのは、早稲田大入学直後の二〇〇〇年四月。十九歳だった。

 事故直後から、鈴木さんは自宅でチラシの裏などに気持ちをつづってきた。「無我夢中で書き殴っていた。今思えば、自分に語ることで自分を慰めていたのでしょう」と話す。

 息子の命を奪った運転者は懲役五年六月の実刑判決を受けたが、鈴木さんは刑の軽さに疑問を抱き、他の遺族らとともに街頭に立って法改正を求める署名活動を展開。そんな地道な活動が、〇一年の危険運転致死傷罪(最高懲役十五年。その後の改正で同二十年)の成立につながった。同年に交通事故や犯罪、いじめによる自殺などの犠牲者の等身大パネルと生前の靴などを展示する「生命(いのち)のメッセージ展」を始め、全国を巡回。一〇年には東京都日野市百草(もぐさ)に「いのちのミュージアム」を開いて常設展示もしている。

 今回出版した詩集「つながれ つながれ いのち」には、膨大な数の中から編集者が選んだ約百三十編を収めた。読み進めると、事故直後の絶望や、運転者への怒り、生命のメッセージ展を続けるうちに「息子は自分を通して生きている」と感じられるようになる過程が浮かび上がる。

 「その時にしか書けない、むき出しの言葉ばかり。改めて読み返すと、あの嵐のような時をよく越えて生きてきたな、と感じます」

 長年の活動の中で悲しみや怒りの激情は薄らいできたという。「わが子や大切な人を亡くすことは、誰にでもあり得る。彼らが生きられなかった時間を、一瞬一瞬おろそかにせず生きないといけない。それが、私たちが彼らに託されたもの」と語る。

 六月十二〜十七日には横浜市の県民ホールギャラリーで、これまでで最大規模のメッセージ展を開く計画を進めており、「いのち 愛 平和」をテーマとした作品を募集している。最大A3判程度までで立体の作品も可。締め切りは四月末。詩集は千四百円(税別)。問い合わせは青娥(せいが)書房=電03(3264)2023=へ。展示品募集については鈴木さん=090(1543)6218=へ。

事故で亡くなった零さん=鈴木共子さん提供

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◆生きていくわたし(詩集「つながれ つながれ いのち」より)

朝起きて

ノートに綴(つづ)る言葉は

「生きていくわたし」という物語の

今日のシナリオだ

昨日の続きの今日だけど

今日は今日の

わたしが主人公

相手役は

姿なき息子

一緒に

泣いたり

笑ったり

怒ったり

わたしの舞台を盛り上げる

今日の一日を

精いっぱい生きて

重ねたら

いつかくるフィナーレを

笑顔で迎えることが

出来るはず

「生きていくわたし」に

乾杯!

 

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