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【社会】

車ピカピカ 働く場広がれ 葛飾の支援事業所、障害者洗車サービス開始

そろいのTシャツを着て洗車作業をする里見幸太さん(右側手前)ら=東京都葛飾区の奥戸福祉館前で

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 知的障害者の就労をサポートする東京都葛飾区の奥戸福祉館が、洗車サービス事業に挑戦している。障害者の働く職種を増やし、収入アップを目指す試み。出張も引き受け、地域との交流の広がりも期待する。障害者らは「ありがとうと言ってもらうとうれしい」と意欲的で、丸山二美(ふたみ)館長(54)は「新しい仕事を知ってもらい、収入を増やしたい」と期待している。 (飯田克志)

 一月中旬、奥戸福祉館前の駐車場。白いミニバンを、里見幸太さん(44)らスタッフ三人が職員とともに洗っていた。そろいのTシャツと帽子を身に着けた「まごころ洗車隊」だ。

 光沢を出す効果のある洗剤を車体に吹き付ける。汚れをタオルで黙々と拭いて落とし、別のタオルで水分を丁寧に拭き取る。窓もガラス専用洗剤できれいにし、三十分ほどで仕上げた。初めて依頼した男性(66)は「よく洗えている」と満足げに車に乗り込んだ。

 社会福祉法人が運営する福祉館での仕事は、これまでパンやクッキーの製造販売、高齢者施設などの清掃などが中心だった。しかし一年前、長崎県佐世保市の障害者就労支援事業者「フュージョン」の洗車事業を知った。力のいる作業がなく、障害があっても取り組みやすそうだった。丸山館長は「洗車を通じて地域との交流も深まってほしい」と挑戦を決めた。

 福祉館の車などを使って練習を始め、昨年十月に仕事としてスタート。軽自動車や普通自動車は料金が千円で、手ごろさも売りだ。作業時間は二十〜三十分ほどで、福祉館駐車場で行うほか出張も請け負っている(区外有料)。

 里見さんたちは、これまでパン製造などを担当していたが、洗車について「もう慣れた」と胸を張る。ともに作業を担当する職員の佐藤晋平さん(41)は「お客さんからお礼を言われると、洗車した車以上にぴかぴかした笑顔になる」と顔をほころばせた。

◆賃金アップに職種拡大課題

 一般企業への就職が難しい障害者や、障害者を支援する事業所にとって収入増は大きな目標だ。障害者の能力に応じて担える新しい仕事の開発も課題になっている。

 事業所には、雇用契約を結び、最低賃金以上を原則支払う「就労継続支援A型事業所」や、雇用契約を結ばず、福祉的な面が大きい「就労継続支援B型事業所」などがある。

 厚生労働省の二〇一五年度の賃金調査では、A型は月額平均で約六万七千八百円、B型は約一万五千円にとどまっている。NPO法人「就労継続支援A型事業所全国協議会」(東京都豊島区)の事務局は「単価の高くない仕事や商品が多く、一般の賃金より低くなってしまう」と話す。

 協議会の一七年の調査(有効回答・九百四十二事業所)では、事業所の自主事業は農業が最多の百五十九カ所。次いで喫茶店・レストランの九十六カ所、弁当・配食・総菜の八十五カ所の順だった。事務局によると、このほかに清掃、チラシやダイレクトメールの封筒入れ、データ入力なども多いという。

 事務局は「障害者のできる新しい仕事をつくるのは難しく、これまでの商品やサービスを一般に負けない質に高めることに力を入れているところが多い」と説明。高収入を得ている実践例を冊子で紹介することを検討している。

◆全国で27事業所

 洗車事業のモデルとなった佐世保市のフュージョンは昨年1月、国内初という障害者による出張中心の洗車事業を開始。そのノウハウを基に知的・精神障害者らの就労を支援する東京、神奈川、埼玉など15都府県計27事業所が取り組む。都内では奥戸福祉館=電03(5670)8111、東京自立支援センター(国立市)=電042(576)9088=が実施する。

 

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