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【社会】

目黒の5歳女児虐待死 転居前の児相情報、生かされず

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 東京都目黒区の船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5つ)が父親の雄大容疑者(33)=傷害容疑で逮捕=に殴られた後に死亡した事件では、結愛ちゃんが一月まで住んでいた香川県で、児童相談所や警察が何度も虐待に介入していた。都内に転居後、一カ月余りで起きた痛ましい死。家族を知る人や関係者は悔やむ。「救える命だったのではないか」と。 (加藤健太、木原育子)

 二〇一六年のクリスマスの夜。当時住んでいた香川県善通寺市のアパート前で、結愛ちゃんはパジャマ姿ではだしのまま、一人で体を震わせていた。近所の女性が上着をかけて抱きかかえ、背中をさすって温めた。「おうちに帰ろうか?」と聞くと「お父さんが怖いから嫌だ」。香川県の児相が翌日一時保護した。

 女性によると、船戸家からは普段から、結愛ちゃんがしくしく泣く声が聞こえることがあった。父親に怒鳴られ「ごめんなさい」と泣き叫ぶ声も。女性は「もっと何かできなかっただろうか。悔しい」。市内に住む結愛ちゃんの母方の祖父は「優しい子。遊んでいると『じいじ、そっちは危ないよ』と言ってくれて…」と声を詰まらせた。

 結愛ちゃんは雄大容疑者の実子ではなかった。警視庁の調べに、「言うことを聞かないので殴った」と容疑を認めているという。

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 香川の児相によると、最初に結愛ちゃんに関わったのは一六年八月。「子どもの泣き声が聞こえる」と通報を受けた。二度家庭訪問したが、結愛ちゃんに会えず、妻が「困っていることはない」と説明。児相は口頭注意にとどまった。

 結愛ちゃんがアパート前で震えていたのは、四カ月後のクリスマス。児相は一時保護したが、一カ月余りで解除した。「父親が『もうたたかない』と言い、結愛ちゃんも『おうちに帰る』と話したため」という。

 昨年三月にも、結愛ちゃんは唇が赤くなり、両膝にすり傷やあざがあった。「お父さんにたたかれた」。児相は二度目の一時保護をしたが、これも四カ月後に解除された。その後の虐待の疑いも。昨年八月、顔や足のあざを病院が発見。結愛ちゃんは「お父さんがたたいた」と言ったが、妻は「何の痕か分からない」と話し、一時保護に至らなかった。

 児相は、児童福祉司が保護者を指導する「指導措置」を続けていたが、今年一月に解除した。体に傷などが見つからず、改善したと判断したという。この間、県警は二度、雄大容疑者を傷害容疑で書類送検(不起訴)していた。

 転居後の目黒区を管轄する品川児相は、香川の児相から情報を受けたが、「指導措置が解除され、緊急とは思わなかった」。担当者が目黒のアパートを訪ねたものの、結愛ちゃんには会えないまま事件が起きた。香川の児相は「虐待のリスクがあると伝えたつもりだが、都県境をまたぎ、認識が十分伝わらなかったかもしれない」と悔やむ。

 

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