東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 3月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

浪江の未来咲かそう 若者戻れるよう独自ブランド育成

NPO法人のビニールハウスで出荷前のトルコギキョウを手入れする川村博さん=福島県浪江町で

写真

 福島第一原発から八キロ北にあり、町の面積の八割が帰還困難区域に指定されている福島県浪江町で、NPO法人「Jin」が震災後から花栽培を続けている。独自のブランドを作り、農業で食べていける経営モデルを完成させ、町に若者を呼び戻そうと奮闘している。 (相沢紀衣)

 十七のビニールハウスが三千四百平方メートルの土地に並ぶ。今月二日、ハウス内では、白い花を咲かせたトルコギキョウの出荷準備が進んでいた。ブランド名は「Jinふるーる」。昨年には東京都の花き卸売業者から、新規産地で高品質な花を作るブランドとして表彰を受けた。代表の川村博さん(62)は「五年以内に栽培面積を一ヘクタールまで拡大したい」と意気込む。

 もともとは、障害者の療育や高齢者の生活介護を行っていた。震災の津波や原発事故の影響で多くの人が町を離れ、施設の周りもバリケードで囲われたが、二〇一三年四月から日中だけ立ち入りができるように。川村さんは「この町で生きていくには農業しかない」と、少しずつ野菜を育て始めた。

写真

 一筋縄ではいかなかった。採った野菜から高い放射性物質が検出され、出荷を断念。代わりに畑にチューリップや菜の花を植えてみると、道ゆく人が車を止めて楽しんでくれ、花栽培に目が向いた。市場で安定した値が付きやすいトルコギキョウを選び、優れた栽培技術で名高い長野県松本市の農家へ習いに行った。

 根底にあるのは「先祖から受け継いだ大地を次の世代にバトンタッチしなければ」という思いだ。一五年からは若者が望む働き方について知ろうと、月に一度、大学生を招いてワークショップを開いた。その意見を参考に、ハウス内に土の水分量や温湿度を測る機械を設置。スマートフォンにそのデータを送信し、どこでも確認できるようにした。若者が嫌がる長時間労働を避ける方法を探っている。

 いま町に住むのは、登録されている人口一万八千人のうち、わずか五百十六人。この七年間、川村さんは前を見て進み続けてきた。「原発事故で多くのものを失った。一番大きいのはコミュニティー。それでも人の思いやりを感じ、すごい出会いもあった。近くに店がないような不便さは、時間が解決してくれるはず。くよくよしていられないよ」と力強く語った。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報