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【社会】

<原発のない国へ>(2) 太陽と相談して生活

電動フォークリフトの中古バッテリーを使う下沢さん=浜松市で

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 浜松市中区に住む静岡文化芸術大教授の下沢嶽(たかし)さん(59)は、自宅の太陽光発電だけで電気を賄う生活を始めて三年目になる。電力会社の送電網に接続しない「オフグリッド」と呼ばれる形態だ。本当に実現可能なのか、不安はないのか。自宅を訪ねた。

 JR浜松駅から車で約二十分。二〇一五年七月に完成した下沢さん宅は、竹やぶの丘を背に立つ。南向きの大きな屋根に、十二枚の太陽光パネル(出力二・九キロワット)。屋根全面を覆っているかと予想していたが、意外に小さい。

 「システムの難しいことは分かりません。家を新築するとき、設計士に相談したら、『オフグリッドはできる』と。妻も乗り気でやってみた」と下沢さん。

 太陽光パネルの数は必要最小限。高価な蓄電池は、電動フォークリフト用の中古バッテリーを探した。蓄電まで含め通常の半額程度でできたが、それでも約二百四十万円かかった。

 夫婦と男児二人の四人家族で、一日平均の電気使用量は四キロワット時強と、一般家庭の三分の一程度。電力会社に払わなくて済む電気代(月二千円程度)で、費用を回収するのは現実的には無理だが、下沢さんは「何より電力会社と縁を切り、加担しないことに大きな意味がある」と語る。

 オフグリッドを考え始めたきっかけは、東京電力福島第一原発事故だった。「原発のリスクの異常な大きさを思い知った。そんなことを続けていていいのか。自分にも未来への責任があるから、できることは何かと考え始めたんです」

送電網につながっていない下沢さんの家。電気は屋根の太陽光パネルだけで賄う=浜松市で

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 冷蔵庫、テレビ、電気オーブン、炊飯器、掃除機、パソコン…一通りの家電はある。エアコンはないものの、家の断熱性と風の抜けやすい構造で、必要性を感じていない。

 リビング脇の壁に埋め込まれた表示器で、発電やバッテリーの状況を見て、どう過ごそうかと考える。妻の未希さん(40)は「例えば今は満充電で放電中。こんな時は、電気を使わないともったいない。オーブンで何か調理しようか、掃除機をかけようか。逆に日が陰り、バッテリーの電気を使うようになると、家事をやめようかな、と」。

 この二年半で停電は二回。一回目は一六年十月の長雨時で計十三時間。蓄電量低下が原因だった。二回目は一七年の大型連休時でバッテリーの接続端子の緩みが原因と分かるまで四日間、ロウソクやオイルランプの明かりでしのいだ。

 下沢さんは「中古の蓄電池には不安も残る。安くていい蓄電池が出てきたら、買い替えを検討します」とオフグリッド生活を楽しみながら続けるつもりだ。「誰でもできるとは思わないが、太陽と相談しながらの生活は、気持ちがいい」(山川剛史)

 

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