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【社会】

<原発のない国へ>(3) 藤沢の分譲地 地産地消

全戸に太陽光パネルを設置した大型分譲地=神奈川県藤沢市で、本社ヘリ「おおづる」から

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 街が丸ごと太陽光発電所になっていた。都心から四十キロ、神奈川県藤沢市の大型分譲地。藤沢駅から車で十分ほどの広大な敷地(十九ヘクタール)に、約五百七十戸が立つ。全戸が太陽光パネルなどを備え、再生可能エネルギーで地域の需要を上回る電気を生み出している。

 南向きの屋根に太陽光パネルを載せた二階建ての住宅がずらりと並ぶ様は圧巻だ。歩道沿いにも太陽光パネルが並ぶ。電柱はなく、街並みはすっきり。電機大手パナソニックの工場跡地を関連会社のパナホーム(大阪)が再開発した。

 太陽光発電と蓄電池のほか、ガスを使った燃料電池を装備している家も多い。価格は周辺相場よりも五百万円ほど高め。東京から移り住んだ後藤貴昌(たかまさ)さん(63)は二〇一四年に買った。購入の決断には、東京電力福島第一原発事故が大きく影響したという。

 「原発に依存しない安全な電力源の確保を、最も重視しました」

 蓄電池があるので、短期間なら停電知らず。消費量を上回る発電が見込める。後藤さん方では、太陽光で発電して蓄電池にため、燃料電池も活用する。使い切れずに電力会社の送電網に流して売却した電気は、一月だけで三百九十五キロワット時。初期投資は必要だが、結果的には財布にも優しい。

 分譲地全体でみると、直近の一六年度は太陽光で計百八十二万キロワット時を発電し、利用量は計百五十二万キロワット時。年間の電気収支は三十万キロワット時のプラスだ。蓄電池の容量に限りがあるため、電力会社の電気も使ってはいるが、一般家庭(月当たり約二百五十キロワット時)百世帯分の電気を生み出している。

 しかも、歩道沿いの太陽光パネルでの発電分は普段は売電し、利益を共用施設の運営費に。災害時には分譲地だけではなく、周辺の住宅の非常用電源にもなる。敷地内の病院や集会所も自前で発電している。

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 大手住宅メーカーはこぞって発電機能付き住宅に力を入れ、分譲地の中心的な仕様にしている。藤沢ほど大規模ではないものの、千葉県浦安市や滋賀県草津市など、各地で「エネルギーの地産地消」を模索する動きが出ている。

 経済産業省によると、太陽光発電(十キロワット未満)で余った電気を電力会社に売る契約を結んでいる家庭は、一七年度末で約百五万軒。全国で五十軒に一軒は電気を自ら作っている。

 国は、二〇年までに新築の注文戸建ての過半数で、エネルギーを自給自足できるようにする目標を掲げる。三〇年には、マンションを含めた新築住宅全体で、計算上はエネルギーを自給自足することを目指す。この通り進めば、電力会社への依存は減り、市民の力が脱原発を後押しすることになる。 (宮尾幹成)

 

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