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【社会】

地下鉄サリン23年 遺族ドキュメンタリー制作 事件後生まれの学生3人

取材を振り返る上智大の(左から)津田真由子さん、向島桜さん、栗原海柚さん=東京都内で

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 地下鉄サリン事件後に生まれ、「教科書の中の出来事」という大学生三人が、夫を亡くした高橋シズヱさん(71)に密着したドキュメンタリー映像「今日もあなたと一緒に。」を制作した。取材を通して感じたのは、当たり前だった生活が一瞬にしてなくなるという事件の恐ろしさ。当時を知らない同世代を中心に、風化防止を訴えている。(山田祐一郎)

 制作したのは、上智大学二年で、同じゼミに所属する栗原海柚(みゆ)さん(21)、津田真由子さん(20)、向島桜さん(20)。

 昨年、栗原さんと津田さんが東京都内で開かれた事件の集会に参加したのをきっかけに、向島さんを誘って制作が始まった。同年五〜六月末にかけて、高橋さんが一正さんと暮らしていた東京・北千住などでカメラを回した。家族や事件への思い、被害者の会代表としての苦悩などを語る様子を約十八分の映像にまとめた。

 事件が起きた一九九五年に三人はまだ生まれていない。あまり実感のない事件だったが、取材を通じて見方が大きく変わった。

 高橋さんからは、事件後、夫の遺品の手帳に花見の予定を見つけ、悔しさから桜が嫌いになったエピソードなどを聞いた。

 その中でも、津田さんが印象に残ったのは、高橋さんが「普通に主婦をやっていて、オウムのことなんて知らなかった」と語るシーン。「何一つ私たちと変わらなかったんだな」と、普通の人たちが突然事件に巻き込まれ、被害者や遺族になることを痛感した。

 向島さんは「事件を知り、いつも乗る地下鉄が全然違うものに見えた」と話す。「被害者や遺族の存在が見えていなかったが、声が届きにくい人の立場に立って考えることで視野が広がった」と振り返った。

 栗原さんも「取材前は『自分に何が聞けるのだろうか』と不安だったが、被害者や遺族にも『聞いてほしい、分かってほしい、忘れないでほしい』という思いがあることに気付いた」という。

 三人は同世代にも関心を持ってもらうきっかけになればと、親しい友人らに映像を紹介している。栗原さんは「テロや事件はどの時代にどの国でもある。事件が風化しないようにしなければ」と、自分たちの思いが広く届くことを信じている。

 映像は動画投稿サイト「ユーチューブ」で見ることができる。

 

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