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【社会】

<取材ファイル>逃げ場なき暴力 続く悲劇

発表会でお遊戯をする船戸結愛ちゃん=提供写真

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 「言うことを聞かない」「泣き声がうるさい」−。そんな理由で父親が暴力を振るい、子どもが命を落とす痛ましい虐待事件が、東京都内で相次いだ。

 目黒区では、船戸雄大被告(33)が長女の結愛(ゆあ)ちゃん(5つ)の顔面を殴ったとして、傷害容疑で逮捕され、二十三日に同罪で起訴された。亡くなった結愛ちゃんは香川県で児童相談所に二度一時保護され、昨年四月に幼稚園を退園していた。

 船戸被告が勤めていた香川県三豊市の食品会社の同僚の男性(44)は、昨年十月ごろに退職の意思を伝えられたと振り返った。「結愛が内気な性格なので、小学校から環境を変えて明るくなってほしい」。そう話す船戸被告を「家庭を大切にする人」と感じていた。しかし今年一月、目黒区に転居後、事件は起きた。

 香川での取材中、足立区でも生後二カ月の女児が虐待を受けて亡くなり、父親(20)が傷害容疑で逮捕された。「またか」と胸を締め付けられた。

 全国の警察が昨年、虐待を受けた疑いで児童相談所に通告したのは六万人超。だが、警察が把握できるのは氷山の一角だ。子どもは身の危険を感じても、自分の家以外に行き場所がなく、親からは逃げられない。

 結愛ちゃんのケースでは香川県警が昨年、船戸被告を二度、傷害容疑で書類送検(不起訴)し、香川の児相も目黒区を所管する品川児相に資料を引き継いだ。品川児相の担当者は家を訪ねたが、結愛ちゃんには会えず、警視庁にも情報を伝えなかった。品川児相は「緊急性が高いと認識できなかった」と釈明する。

 警視庁の捜査関係者は「(遺体は)ガリガリで、一目で虐待と感じた」。別の捜査幹部は「救える命だった。何度同じことが繰り返されるのか」と唇をかむ。

 生後半年の子を持つ親として、逃げ場のない子どもたちに向けられた暴力に、やりきれない思いが消えない。香川で暮らす結愛ちゃんの母方の祖父は「(結愛ちゃんを)ちゃんと送ってやりたい。今はそれしか頭にない」と言葉をしぼり出した。その涙を忘れられない。 (加藤健太)

 

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