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【社会】

高齢居住者44%に 避難指示解除…若者戻らず

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 東京電力福島第一原発の事故に伴う避難指示が解除された福島県内の九市町村で、居住者の44%超が、六十五歳以上の高齢者であることが、本紙のまとめで分かった。事故前(二〇一〇年)より17ポイント高い。事故から七年がたち、若い世代を中心に避難先で生活基盤を整えた人が多く、高齢者が多く地元に帰っていることを裏付けた。住民の帰還は、政府の思惑通りには進んでいない。 (小川慎一)

 昨年三〜四月に、浪江町、富岡町、飯舘村、川俣町(山木屋地区)で避難指示が解除され、間もなく一年。先行して解除された地域を含めて、帰還や転入などで実際に九市町村に住んでいる人は、三月一日時点で一万一千七百十五人。住民登録をしている人は六万八百二十五人おり、居住率は19・3%にとどまる。

 高齢者は五千百九十七人で、高齢化率は44・4%に上った。事故前の一〇年の高齢化率は、全国平均が23%で、九市町村は27・3%。七年後には全国が4ポイント上がったのに対し、九市町村は17ポイントも上がった。

 解除後の飯舘村には六百十八人が住み、高齢化率は60・7%。川俣町(山木屋地区)も61・9%で、いずれも事故前に比べ30ポイント以上高くなっている。

 浪江町と富岡町はいずれも居住率はわずか3%程度で、高齢化率は40%を超えている。両町は浜通り地域の商業圏として、事故前はにぎわっていた。特にJR常磐線の浪江駅周辺は飲食店が多かったものの、今も壊れた建物が残る。再開した店は数軒しかない。

 三月初めに、福島県いわき市から浪江町に戻った会社員、坂下弘幸さん(54)は「七年は長い。自分は職場が町内だから帰ってきたけど、避難先で就職したり家を買ったりして、自分の子どもたちも含め、知り合いや近所の二十〜四十代で帰ってくる人はいない。昔のような町に戻るわけがない」と話した。

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◆介護 担い手不足深刻

 東京電力福島第一原発事故での避難指示が解除された福島県の九市町村で、避難先から戻った人は高齢者が多い。介護が必要な人が増えていくことが予想されるが、肝心の介護の担い手が不足している。

 福島労働局によると、九市町村を含む「相双(そうそう)地区」の介護職の有効求人倍率は、二〇一七年度(昨年四月〜今年一月)の平均で四・一七倍。福島県全体では三・〇四倍、全国平均では三・六一倍なので、介護職の不足がより深刻だ。

 相双地区では事故前の二〇一〇年度の平均が〇・七七倍で、仕事の方が不足していた。しかし事故後は毎年三倍以上で推移し、人手不足が続く。労働局の担当者は「介護職は女性が多かったが、避難した人もあり、働き手がいなくなってしまった」と話す。

 県によると、避難指示が出た市町村には、特別養護老人ホームなどの介護施設が十三ある。今年三月一日時点で六施設が休止し、三施設が避難先で運営。地元で再開や新設した四施設は、職員が事故前の半分以下となり、入所定員を絞っている。そのため介護が必要な三百人以上の高齢者が入所を待っている状態だ。

 県高齢福祉課の担当者は「地元に戻っている高齢者は元気な人が多いが、月日がたてば介護が必要な人が増えるため、介護需要は高まる」と予想する。

 政府は九市町村での介護職不足を補おうと、四月から新たな施策を始める。都市部の事業者が職員派遣する場合、家賃など生活費を補助したり、介護施設への就職希望者に支給する準備金を三十万円から五十万円に増やしたりする。ただ、県の担当者は「どの自治体も同じような支援をしている。どれぐらい人が集まるかは分からない」と話した。

 

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