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【社会】

品川で15年前 6歳長女亡くした父 事故撲滅訴え 講演続ける

長女の菜緒ちゃんが亡くなった交差点の前で、事故の様子を話す父親の佐藤清志さん=5日、東京都品川区で

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 春の全国交通安全運動が六日、始まった。昨年、全国で交通事故の犠牲になった十四歳以下の子どもは五十七人。十五年前、幼稚園児の長女=当時(6つ)=を亡くした東京都品川区の佐藤清志さん(53)は、講演などで事故撲滅を訴え続けている。娘は今年成人式を迎えたはずだったが、時は止まったままだ。「車を運転する人は、常に人の命を奪う危険があることを忘れないでほしい」 (福岡範行)

 二〇〇三年五月、自宅近くの職場で事故の知らせを受けた。飛び乗った自転車は途中でチェーンが外れ、その場に置いて病院まで走った。対面した長女・菜緒ちゃんはタイヤの下敷きになり、体や顔がつぶされた状態だった。小さな手を握ると、散歩でつないだぬくもりが蘇(よみがえ)り、ようやく娘だと分かった。

 菜緒ちゃんはスイミングスクールの帰途、事故に遭った。品川区戸越三の国道1号交差点。青信号の横断歩道を子ども用自転車で渡っていた時、右後ろ側から左折してきた十トントラックにひかれた。

 水遊びが大好きで、プールのある小学校への入学を楽しみにしていた。弟のオムツ替えを手伝い、二人目の弟が生まれるのを心待ちにしていた。事故五日前に誕生日を迎えたばかり。喪失感で、楽しかった記憶すら抜け落ちてしまった。

 運転手は佐藤さんと同じ建設業界で働く女性だった。裁判で「何かに乗り上げた感触はしたが、人と思わなかった」と話すのを聞き、悔しさが込み上げた。

 一方で、自問自答もした。「自分は歩行者目線の運転をできていただろうか」。例えば、信号機のない交差点で横断歩道を渡ろうとする歩行者がいたとき、停車していたか。「自分も車優先の意識に漬かっていた」と気づかされた。

 現場交差点で二度と同じ事故が起きてほしくない。歩行者が渡る時、右左折車が入らない「歩車分離式信号」に変えるため、周辺住民と署名を集めた。事故翌年に実現し、巻き込み事故の危険は減少した。

 「被害者支援都民センター」の活動に参加したのをきっかけに講演も始めた。運転免許試験場の講習ビデオにも出演。月二〜三回は中学高校で「命の大切さを学ぶ教室」に立ち、あえて事故直後の生々しい様子を伝えている。

 昨年、全国の交通事故の死者数は三千六百九十四人で、前年比二百十人減。十四歳以下も減少傾向だが、昨年は五十七人の命が奪われた。

 佐藤さんは今も毎週、事故現場に花を供え、娘を思う。「車優先の社会、ハンドルを握る大人たちの意識を変えていかないといけない」

 

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