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【社会】

強制不妊 個人記録現存25% 19都府県なし、救済に壁

神奈川県立公文書館に保存されていた優生保護審査会の決定通知書。審査会が「適当」と認めれば本人の同意なく手術をしていた(閲覧用のため一部は黒塗り)

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 旧優生保護法(一九四八〜九六年)による障害者らへの強制不妊問題で、本紙が全都道府県に取材したところ、当事者の個人名が記された資料が現存するのは二十八道府県の約四千人にとどまることが分かった。国の統計にある手術人数のわずか25%。厚生労働省は福祉施設、病院を含めて実態を調べる方針だが、記録が残っていない多数の被害者をどう認定し、救済するかが焦点になる。 (石川修巳)

 本紙が都道府県に個人記録の確認状況を尋ねたところ、北海道千三百十四人分、宮城県九百二十九人分の順に多く、合計では二十八道府県の四千八十三人。千葉や岐阜などのように「歴史資料」「学術研究資料」として一部が保管されていたケースもあった。

 東京や静岡など十九都府県は「探したが見つかっていない」と回答。自治体ごとに定めた文書の保存期限が過ぎたため、廃棄されたとみている。

 見つかった個人記録は、各道府県で強制不妊の適否を判定した優生保護審査会への申請書、家系図などが多く、ほかに手術実施報告書や手術費用請求書など。ただ、審査会資料だけでは、実際に手術が行われたかどうかは分からない。

 旧厚生省の統計によると、「遺伝防止のため公益上必要」などとして、強制的な不妊手術が行われたのは一九四九〜九二年の計一万六千四百七十五人。このうち女性が七割を占める。本人の同意があったとされる八千五百十六人を合わせると約二万五千人になる。

 千葉や群馬など五県は統計よりも資料が多く見つかったが、「理由は分からない」(千葉県)という。

 強制手術を巡っては、今年一月に宮城県の六十代女性が全国で初めて国家賠償請求訴訟を起こした。五月中旬には東京と札幌、仙台の三地裁に被害者たちが提訴する。

 旧法施行から七十年がたち、さらに九六年の旧法改定後も二十二年間、国は「当時は適法だった」として調査や謝罪をせずに放置してきた。提訴などを受け、ようやく被害救済の動きも。厚労省は実態調査とともに、都道府県別の被害者らの相談窓口をとりまとめて公表するという。超党派で先月発足した国会議員連盟も救済策を模索している。

 この問題に詳しい市野川容孝・東京大大学院教授(医療社会学)は「被害者は年々亡くなっていく。これからの障害者の権利保障に向けて、国は過去の問題に答えを出すべきだ」と話している。

 

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