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【社会】

駆け込み乗車 リスク大 識者「1分遅れ、損失160万円」

駅構内の柱に張られた、電車への駆け込み防止を訴えるポスター=東京都新宿区の小田急新宿駅で(木口慎子撮影)

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 電車への駆け込み乗車が、事故や遅れの大きな原因になっている。近年は相互直通運転が進み、わずかなトラブルが広範囲のダイヤの乱れにつながる。首都圏の26の鉄道事業者は今月、初の防止キャンペーンに乗り出し、共通の啓発ポスターを駅に張り出すなど、ゆとりある乗車を呼び掛けている。 (増井のぞみ)

 二十六日朝のJR池袋駅。ドアが閉まる間際の電車に駆け込む姿が、頻繁に見られた。周辺で会社員ら数人に駆け込み乗車経験を問うと、五十代の男性は「よくやる。仕事や待ち合わせに間に合わせるため」。二十八歳女性も「目の前にいる電車に乗りたいから…」と明かした。

 駆け込み防止を呼び掛けるポスターが大きく張り出され、注意喚起の放送が流れるなど、キャンペーン中の今月もトラブルは起きた。四日夕、JR東京駅で京浜東北線に駆け込んだ乗客のかばんがドアに挟まり、非常停止ボタンが押された。同線と、並走する山手線内回りが数分遅れた。

 国土交通省の昨年末のまとめで、人身事故などを除く十分未満の遅れの原因で最も多いのが、乗り降りに時間がかかった「乗車時間超過」(47・2%)。次いで、駆け込み乗車が招く「ドア再開閉」(16・0%)が多い。いずれも乗客のマナーが大きく影響する遅れで、六割を占めた。

 芝浦工業大の岩倉成志(せいじ)教授(交通計画)は、朝のラッシュ時間帯の一時間に約八万人が利用する東急田園都市線を例に、駆け込み乗車の経済的な損失を試算。「一人の駆け込み乗車で電車が一分遅れ、後続列車に波及し、収束に三十分かかれば四万人に影響する。首都圏の鉄道事業の評価に使われる指標では、一人一分間の経済的価値は四十円に相当するので、他の乗客の損失は合計で百六十万円に上る」という。

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 深刻な事故につながった例もある。一九九四年に都営浅草線の浅草橋駅で、九五年にJR東海道新幹線の三島駅で、駆け込み乗車した人がドアに挟まれたまま引きずられ死亡した。

 また、国交省のまとめで、十分以内の遅れが月に十日以上あったのは、東京メトロ有楽町線など九路線。うち七路線は、他社や他路線と相互に直通運転している路線だった。

 相互直通は六〇年に都営浅草線と京成押上線で始まり、二〇一五年には東京圏の千八百キロに上る。国交省鉄道局は「長距離でも乗り換えなしで便利な一方、他の路線のトラブルの影響を受ける」としている。

 ドアの駆動装置など安全装置が発達し、駅の非常停止ボタンも増設され、駆け込み乗車が深刻な事故につながる事例は減る傾向にある。だが、京成電鉄の担当者は「時間に余裕を持って、ゆとりある乗車に心掛けてほしい」と呼び掛けている。

 

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