東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 5月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

豊洲観光拠点 平行線

写真

 豊洲市場(東京都江東区)の観光拠点「千客万来(せんきゃくばんらい)施設」の着工にめどが立っていない問題で、小池百合子知事は一日、事業予定者の万葉倶楽部(くらぶ)(神奈川県小田原市)を訪れ、高橋弘会長と初めて協議した。同社は、築地市場(中央区)跡地の類似施設構想など都の方針転換が原因として知事の謝罪などを求めており、小池知事は協議後、報道陣に「誤解を与えたことは陳謝した」と説明。一方、高橋会長は「非を認めなかった」と憤った。(川田篤志)

 豊洲市場への移転が今年十月に迫る中、当初は八月開業とされた飲食店などの商業ゾーン、来年八月開業とされた温泉・ホテルゾーンは宙に浮いたまま。両者は今後も協議を続けるが、同社が事業を続けるかどうかを判断する時期について、都幹部は「一定の期限で区切る必要がある」と言及した。

 この日、小池知事は報道陣に「事業を毀損(きそん)するような誤解を与えたことに『申し訳ございません』と陳謝した」と説明。しかし、高橋会長は「事業が遅れたことに責任を感じないかと知事に聞いたが、非を認めなかった。謝罪ではない」と食い違った。

 高橋会長によると、この日の協議で、百七十以上の飲食・物販店のテナント探しを都に求めることや、建物の整備費用を三年前の価格で受注するゼネコンを紹介することを都に新たに要望した。

 小池知事は「行政としてできること、できないこともある」と回答を保留したとし、「溝を埋めるのはそう簡単ではないなとも思った」と述べた。

◆五輪間に合わず業者誤算

 観光拠点「千客万来施設」の着工がこじれた理由は主に二点ある。一つは、豊洲市場の移転延期によって観光拠点が成り立たなくなる恐れが生じたため。もう一つは、築地市場跡地を再整備し「食のテーマパーク」とする構想に伴い、千客万来施設の採算が悪化する可能性が出たことだ。

 いずれも小池知事の方針変更による誤算で、事業予定者の万葉倶楽部の高橋弘会長は謝罪を求めていた。

 同社にとって、当初の思惑が外れたのは事実。千客万来施設は東京五輪・パラリンピック前の来年八月に全面開業の予定だった。競技施設に近く、多くの来場者が見込めた。しかし、今から着工しても五輪前に間に合わず、建設需要の高まりで工費は高くつく。

 ただ撤退した場合でも、建物の基本設計費などで既に約十億円の支払い義務が発生するという。高橋会長は「降りるに降りられないし、さりとて今の条件では前に進まない」と胸の内を明かした。

 一方、都にとって、同社が撤退すれば小池知事の大きな失点となる。都によると、今年十月の豊洲開場が決まった後の今年一月から同社との協議を本格化。三月末までは、事務方レベルで事業実施に向けた具体的な条件を詰めていたという。「急に方針が変わったようで驚いている」(都幹部)と戸惑いを見せる。

 <千客万来施設> 豊洲市場内の一角に整備する予定の観光拠点。万葉倶楽部の事業提案によると、1・1ヘクタールの土地に170以上の飲食・物販店が入る商業ゾーンや、24時間営業の温泉とホテルを整備する。来場者数は商業ゾーンで年間約138万人、温泉・ホテルで約55万人を想定。当初は昨年1月に着工し、来年8月に全面開業する予定だった。地元の江東区は豊洲市場受け入れの条件として同施設の整備を求めている。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報