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【社会】

地方議会「種子法復活を」 意見書続々、首都圏7市も

 日本の食卓に欠かせないコメと麦、大豆の種子の安定供給を都道府県に義務付けていた「主要農作物種子法」が三月末で廃止されたことに、懸念の声が高まっている。地方議会では国に対応を求める意見書が次々と可決され、消費者の関心を映画で高めようとする市民運動も拡大。こうした動きを受け、野党は同法の復活法案を今国会に提出した。(谷悠己、辻渕智之)

 種子法は戦後の人口増加による食糧難を防ぐため、一九五二年に制定。国の財政支援を受けて、都道府県の農業試験場などがコメなどの種子を開発・管理し、農家に安定供給する目的で、結果的に民間の種子開発を規制。種子法に守られて現在、コメでは三百種以上の国産種子が流通している。

 政府は昨年二月に「種子の品質は安定し、法の役目を終えた」「民間参入の妨げになる」として、種子法の廃止法案を国会に提出。学校法人「森友学園」問題などで国会が紛糾する陰であまり注目されず、与党などの賛成で成立した。

 この決定に地方は敏感に反応した。種子法の廃止で、種子の価格高騰や少量生産品種の淘汰(とうた)、研究者や研究成果の情報が巨大な外資系企業に移ることなど、日本の食の安全保障が懸念されるからだ。

 参院事務局によると、種子法廃止を懸念する地方議会の意見書で受理した数は昨年九月以降、六十件を超え、首都圏では七市が含まれる。東京都の小平、国立、狛江と神奈川県の大和、海老名に加え、埼玉県吉川、茨城県常総の各市だ。

 うち国立市では、国会で廃止に賛成した自民党の会派の二氏も意見書案の提出者に名を連ね、全会一致で可決された。「中小農家の撤退、大手資本参入による品種の淘汰や独占」などに危惧(きぐ)を示し、「国立市の農業、消費者にも重大な問題」と訴えている。吉川市は県内需要の約四割のコシヒカリ種子を栽培しているため、「影響は計り知れない」という。

 こうした動きに呼応して、当時の希望の党は種子法の復活法案を作成。廃止理由となった民間参入にも配慮する規定を盛り込み、四月十九日に立憲民主など野党六党共同で衆院に提出した。政権を揺るがす問題が山積している今国会だが、野党各党は成立に向け本格審議を目指す考えだ。

◆外国企業独占の恐れ

 <民主党政権時代に農相を務めた山田正彦弁護士の話> 種子法は、制定当初は食糧難への対応が目的だったが、その意義は都道府県の責任下で多様な種子が生産される法的根拠としての役割に移っていた。廃止で民間重視の政策に転換され、公的に守られてきた希少種などが、効率性の高い民間種に集約されていくことが懸念される。

 かつて国産100%だった野菜の種子は、法規定がなかったため現在では九割以上が外国産に置き換わり、しかも多くが米国のモンサントやデュポンといった世界的メジャー企業に独占されている。こうした企業は遺伝子組み換えの豊富な技術を持っており、コメなどの主要作物の種子でも外国企業の独占や、遺伝子組み換え種子の流通を許すことにつながる恐れがある。

 

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