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【社会】

<リーグ開幕25周年 Jのある社会> (上)川崎、障がい者就労支援

客席の清掃作業を体験をする参加者ら=川崎市の等々力陸上競技場で

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 キックオフまでの約四時間。川崎市の等々力陸上競技場では、J1川崎のホーム戦の準備にあたるボランティアに、障がいのある市民らがスタッフとして毎試合のように加わる。業務はスタンドの席やテーブルの清掃、チラシ配り、ごみの分別など多岐にわたる。

 「お金を払って試合を見に来てくれる方に、きれいな席を用意したいですからね」。参加者の一人、佐藤麻紀さん(46)は座席を拭く腕に力を込めた。

 心を躍らせるようなイベント会場で働きながら障がい者らに社会参画のきっかけを提供しようと、川崎市と包括協定を結ぶNPO法人ピープルデザイン研究所(東京都渋谷区)が市やクラブと協力し、試合会場などで始めた「就労体験」。今年で五年目を迎えた。

 佐藤さんは十六年前に右膝を大けがし、人工関節にした。「今までできたことができなくなり、ナーバスになって自分を失ってしまった」。かつて勤めた企業では職場になじめず、心療内科に相談したことも。だが競技場では、来場者とのちょっとした会話も楽しいと笑う。うつ病を患い生活保護を受けているという参加者の男性(45)も「この仕事をやることで自信になる」。参加者が正規就労者になるケースも増えてきた。

 今では三十八都道府県、五十四クラブに広がったJリーグ。各クラブは地域貢献活動などに力を入れ、昨年は全国で一万八千件の取り組みがあった。中でも川崎の就労体験は、Jリーグが高い関心を寄せる。

 特長は互いを補完する関係性。川崎は「職場」を提供することで人材を確保し、参加者は必要とされる喜びを感じながら運営を助ける。クラブスタッフだけでは疲弊しがちなホームタウン活動も、NPO法人などの「仲間」と役割を分担。Jリーグの米田恵美理事(社会貢献活動担当)は「支援・被支援の関係は上下の関係になりがちだが、ここは互いを支え合う関係性。誰もが幸せになる組み合わせ」と高く評価する。

 Jリーグは十四日に東京都内でワークショップを開催し、川崎などの好例を全国のクラブでも実現できるよう知識を共有できる土台づくりを協議する。今後のあるべき姿は「試合だけでなく、各クラブが生活の一部として町の中に溶け込んでいくこと」と米田理事。「地域の思いをしっかりキャッチし、各クラブが公共財になっていく流れをつくりたい」 (上條憲也)

 ◇   ◇ 

 Jリーグは十五日でリーグ開幕二十五周年を迎える。「地域密着」を掲げて四半世紀。地域社会との関わりで見えてくるJリーグの存在意義を二回続きで紹介する。

 

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