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【社会】

働き方法案の根拠 労働時間再調査2割削除

 厚生労働省の労働時間調査で異常値が相次いで見つかった問題で、厚労省は十五日、衆院厚労委員会理事会にデータの再調査結果を示した。不適切データが見つかったり、含まれる可能性が高いとして、全体の二割に当たる約二千五百事業所を除外して一般労働者の働く時間をあらためて集計した結果、従来の集計よりも一カ月間や年間の残業時間は短くなった。加藤勝信厚労相は衆院厚労委で「謙虚に反省していかなければならない」と陳謝した。

 働き方関連法案の策定過程で根拠の一つとなった調査の信頼性への疑問が強まりそうだ。衆院厚労委の野党筆頭理事を務める立憲民主党の西村智奈美氏は「このようなミスの上で作られた法案となると法案全体の信頼性に関わる。作成し直す必要があるのではないか」と強調した。

 加藤厚労相は厚労委で調査自体は適正と説明。厚労省の担当者も記者会見で「残り九千超の事業所を確保し、統計上も有意だ」とした上で、異常値が見つかった原因を「初めて調査する労働基準監督官もいた。調査や記入の方法を徹底できなかった」と釈明した。

 問題となったのは「二〇一三年度労働時間等総合実態調査」。厚労省は既に裁量労働制の労働時間データを撤回しているが、裁量制で働く人が調査対象となった約千五百事業所は、一般労働者についても再集計から除外。不適切データが見つかった約千事業所も除いた。その結果、平均的な人の年間残業時間は七十八時間三十分から六十五時間五十一分に減った。

 厚労省は当初の調査結果を基に、平均的なケースの一日当たりの労働時間を裁量制で九時間十六分、一般労働者で九時間三十七分とし、安倍晋三首相は一月、国会で「裁量制で働く人の方が一般労働者よりも労働時間が短いとのデータがある」と答弁していた。

 だが、データに疑義が生じ首相は二月に答弁を撤回。三月には問題を受け働き方関連法案から裁量制の対象拡大の部分を削除した。

◆「残業代ゼロ」撤回を

<解説> 厚労省の労働時間に関する調査に関し、不適切なデータが見つかったなどとして、二割に当たる約二千五百事業所のデータを削除するという異常な事態になったのに、厚労省は調査結果そのものは適正と強調している。

 調査は、今国会の最重要テーマである「働き方」関連法案の議論の「出発点」に位置付けられた。安倍晋三首相が国会で「裁量制で働く人が一般労働者より短いというデータもある」と答弁したのも、この調査を重視していたからだ。

 政府は働き方法案について、労働者を守るために必要と説明する。しかし、労働者がどのような労働環境に置かれているのか正確に把握せず、労働者を守る内容を法案に盛り込むことはできない。再調査が必要だ。

 政府が法案成立にこだわる理由の一つとして、「高度プロフェッショナル制度」(残業代ゼロ制度)の創設がある。労働時間の規制を外し、何時間でも働けるようにする点では、撤回に追い込まれた裁量労働制と同じで、野党は「スーパー裁量労働制」と呼ぶ。

 政府は経済界の強い意向を受けて創設を目指すが、経営側が多くの成果を求め、労働者の長時間労働、さらには過労死を助長すると指摘されている。法案の出発点となった調査の信頼性が失われたいま、白紙撤回するしかない。 (木谷孝洋)

 

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