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【社会】

強制不妊の悲劇 学生が学ぶ 学習会立ち上げ

新里宏二弁護士を招き、旧優生保護法や強制不妊の問題について考える学生たち=東京都立川市で

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 旧優生保護法(1948〜96年)により障害者らに強制的に不妊手術が繰り返されていた問題で、大学生や大学院生らが旧法による被害について学ぶ活動を始めた。17日には被害者らが東京、仙台、札幌の3地裁で国に損害賠償を求める訴訟を一斉に起こす。若い世代がこうした動きに着目し、今も差別や人権侵害が日常に潜んでいないかと問い直す狙いだ。 (石川修巳)

 「被害者が声を上げ、実態を明らかにする。それが社会を変える力になると信じてきたし、これからも信じたい」

 四月二十六日夜、東京都立川市であった学習会。旧優生保護法の被害者弁護団長を務める新里(にいさと)宏二さんが、約六十人の学生たちに語りかけた。

 「なぜこんなことが起き、放置されてきたのか。若い皆さんにも問題意識を共有してもらうことで、社会は少しずつ変わると思っています」。次世代を担う学生に思いを伝えようと、仙台市の事務所から会場へと急いだ新里さん。「いま六十六歳ですが、五百メートルくらい走りました」とも明かした。

 主催したのは「旧優生保護法を考える学生の会」。ブラック企業問題などに取り組んできた大学生や大学院生らの有志約十人で結成した。学習会のほか、不妊手術を強いられた当事者へのヒアリングや、被害者への補償を求める署名活動なども行うという。

 東京大大学院で貧困問題などを研究する渡辺寛人さん(29)は「優生思想に近い社会の価値観は今もあって、生きづらさにつながっている。過去の話ではなく自分たちの問題として、学生自身が考えたり学んだり、アクションを起こしたりしたい」と語る。

 旧法から差別的な規定を削除し、母体保護法に法律名を改めたのが二十二年前。学習会に集まった学生たちの多くは、「旧法後」に生まれた世代に当たる。

 熱心にメモを取っていた日本大法学部の辰巳和貴さん(20)は「生まれる一年前まで、こんな差別が法律で認められていたなんて」と驚く。今年一月に宮城県の被害者の女性が初めて提訴したことで社会的注目が集まり、救済措置の流れもできてきた。辰巳さんは「被害者の声が社会の雰囲気を変えられるんだと実感できたし、風化させちゃいけない」と力を込めた。

 中央大法学部の女子学生(18)は「どうして当時は全会一致で法律が成立したのかな。明らかに人権侵害だし、しかも九六年まで適法だったなんて。司法には社会を変える力があると信じて、弁護士を目指したい」と話した。

<旧優生保護法> 「不良な子孫の出生防止」を目的に1948年施行。ナチス・ドイツの「断種法」の考えを取り入れた国民優生法が前身で、知的障害や精神疾患、遺伝性疾患などを理由に本人同意がない場合も不妊手術を認めた。厚生労働省によると、不妊手術を施された障害者らは約2万5000人で、うち強制されたのは約1万6500人に上る。96年に障害者差別や強制不妊手術に関する条文を削除、「母体保護法」に改められた。

 

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