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【社会】

記者らセクハラ被害、複数回 周囲に相談できず65%

メディア関係者を対象にしたセクハラについてのアンケート結果を公表した「性暴力と報道対話の会」の記者会見=17日、東京都渋谷区で

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 前財務次官のセクハラ問題を受けて、性暴力被害者と報道関係者でつくる民間団体「性暴力と報道対話の会」が十七日、セクハラ被害についてメディア関係者にアンケートした結果を公表した。被害を受けたと答えた人のうち、周囲への被害の相談を「考えなかった」「しなかった」と、一人で抱え込んだ人は65%に上った。 (出田阿生)

 会は「報じる側こそが足元の人権問題に目を向ける必要がある」として同日、社内調査や防止の取り組みを求める要望書を、日本新聞協会と日本民間放送連盟に提出した。

 調査はインターネットを使って四月から実施し、新聞社や放送局、出版社などの社員やフリーランスの記者ら計百七人(うち女性百三人)が回答した。年齢は二十〜六十代で、三十代が最も多かった。このうち百二人がセクハラ被害を経験し、その96%が複数回遭ったと回答。「十回以上」も半数に上った。加害者は取材先や取引先などが40%だったが、上司(24%)、先輩(19%)ら社内や業界内での被害も目立った。

 被害内容は「性的な冗談やからかい」を六割が経験。「抱きつかれた」が四十九人、「体を触られた」が八十二人に上った。さらに性行為を強要された人は八人おり、強要されかけた人も三十九人いた。刑法の強制性交等(旧強姦(ごうかん))罪や強制わいせつ罪に該当するような事例で、被害の深刻さが浮かび上がった。

 被害を相談できなかった理由は「『だから女は面倒だ』などと言われる」が最多の三十八人。「女は性的な対象(遊びの道具)ぐらいの価値しかないんだと感じた」と書いた人も。周囲の無理解への恐れや心の傷から、沈黙せざるを得なかった状況をうかがわせた。

 調査を実施した会の発起人、山本潤さんは「メディア各社は長年セクハラを放置してきたが、今こそ『許さない』という意思を社内外に示してほしい。女性を担当から外しても根本解決にならないのは明らかで、女性が働くすべての職場で改善を考えるときだと思う」と話した。

◆「女性の重圧」につけ込む

 アンケート結果について、元毎日新聞記者でセクハラ問題に詳しい上谷さくら弁護士は「セクハラをした側に自社の上司や先輩、同僚、同業他社が多い。メディア自身が、セクハラを人権問題ととらえられない者を内部に抱える団体であることを示す」と指摘した。

 調査では、加害者は四十〜五十代の男性、被害者は二十代女性というケースが約七割を占めた。上谷さんは「現場では実力がないうちに会社の看板を背負い、社会的立場が高い男性に取材する。被害者は『女は使えない』と言われたくないとの重圧から無理をし、一部の男性がそこにつけ込む」と分析。「セクハラをする人は相手を尊重しないので、男性にもパワハラをする構造がある」と語った。

 「今でも傷つき悩む」人は76%に上り、被害後の心身の状況で最も多い回答が「なかったことにしようとした」だった。

 臨床心理士の斎藤梓さんは「セクハラで傷つくのは『人として尊重されなかった』『意思を無視された』から。被害を相談することは、自分が性の対象とされた事実を改めて認識させられ、大変な苦痛でもある」と察する。「被害者が勇気を持って声を上げつつある今こそ、権力構造で生じる暴力に自覚的な社会に変わる時だと思う」とした。

<アンケートに寄せられた声(自由回答)>

◇相手にこびてもネタを取れという圧力がひどい

◇正社員の被害は減ってきたが、派遣社員やフリーの人の被害は悪化している

◇男性記者にチャンスが譲られるだけと割り切ってきた。キスや抱擁、押し倒そうとした政治家もいた

◇我慢するものと思い込んでいた。前財務次官の件での勇気ある告発に感謝したい

◇二次被害に苦しみ周囲に相談しづらい状況がある。当事者を支える人を増やしてほしい

◇性的な話を笑って受け流すなど、セクハラを許す空気をつくってきたのは私自身だ

◇男女で対立はしたくない、どうしたらいいか一緒に探りたい

 

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