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【社会】

おもいやりコーヒーいかが 山谷が分かる 交流カフェ

「さんやカフェ」でコーヒー1杯を無料提供する「おもいやりコーヒー」の掲示を見つめる外国人ら=東京都台東区で(市川和宏撮影)

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 元日雇い労働者らの簡易宿泊所が多い東京・山谷地区で、外国人旅行者向けの格安ホテルが増えている。訪れた外国人は街の歴史を知らないため、周囲の様子に戸惑うことも少なくない。こうした外国人と元労働者との交流を促そうと、支援団体がカフェをオープンした。誤解やすれ違いをなくし、「多様性の街として山谷の魅力を発信できれば」と期待している。 (川田篤志)

 交流拠点は、宿泊者の八割が外国人旅行者という「ホテル寿陽(じゅよう)」(台東区清川二)の一階に入る「さんやカフェ」。このホテルを運営し、元労働者の居住支援などに取り組む一般社団法人「結(ゆい)YUI」が三月末に開設した。

 店内の黒板には「困窮者の方に、コーヒーを一杯プレゼントしませんか?」の文字。メニューでも英語と日本語で、この地域には建設労働に携わった元日雇い労働者らがいると紹介し、「おもいやりコーヒー」への寄付を呼び掛けている。

 趣旨に賛同した外国人らがコーヒー一杯分を余分に支払い、店を訪れる元労働者に無料で提供する取り組みだ。コーヒーを介して、接点の少ない両者の交流を促す。イタリアで始まった善意の仕組みという。

 代表理事の義平真心(まごころ)さん(44)は、ホテルに泊まる外国人客から、さまざまな戸惑いの声を聞いてきた。路上で車座になっていたり、酒に酔って話し掛けられたり。元労働者への偏見を防ごうと、交流拠点の開設を思い立った。

 オープンから一カ月半でまだ外国人からの寄付はないが、知人や福祉団体の関係者から善意が集まっている。四月下旬には、生活保護を受けながら山谷地区で八年前から暮らす大塚賢一さん(50)を店に招待した。

 大塚さんは「外国人と触れ合う場所になるのは大歓迎。生活の刺激になる」と笑顔を見せる。義平さんは「外国人宿泊者のほとんどは山谷の歴史を知らない。知らないことで生まれる誤解やすれ違いをなくしたい」と話している。

 四月二十三日からは、生活保護受給者らに路上のごみ拾いに参加してもらい、対価として店のサンドイッチなど軽食を提供する試みも始めた。社会や地域とのつながりを持ってもらう目的だ。週一回のペースで続けており、これまで計五回開いた。まずは生活保護受給者に作業に慣れてもらい、今後は外国人旅行者の参加も呼びかけるつもりだ。

 営業時間は午前八時〜午後四時で、定休日は火、水曜日。コーヒーは一杯三百五十円。誰でも利用できる。

<山谷地区> 山谷は昔の地名で、台東、荒川両区にまたがる簡易宿泊所の密集地域。東京都によると、戦後復興による労働需要の高まりで日雇い労働者の街となり、東京五輪前年の1963年には222軒に約1万5000人がいた。現在は簡易宿泊所で暮らす約4200人の9割が生活保護受給者。十数年前から外国人向けの格安ホテルが増え始め、民間団体の調査では外国人宿泊者は年間10万人との推計がある。

 

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