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【社会】

飯舘村住民の裁判外申し立て 原発賠償増、協議打ち切り

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 東京電力福島第一原発事故で避難を余儀なくされた福島県飯舘村の三地区の住民計二百九十四人が、東電に慰謝料増額を求めて申し立てた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、国の原子力損害賠償紛争解決センターが二十八日付で和解の仲介手続きを打ち切った。センターが示した和解案を、東電が受け入れなかった。

 和解案が示されていたのは、蕨平(わらびだいら)地区の八十七人、比曽(ひそ)地区の百七十七人、前田(まえた)・八和木(やわき)地区の三十人。三地区は昨年三月末に避難指示が解除されたが、放射線量が高い帰還困難区域の長泥地区に隣接している。

 センターは東電に、避難までに被ばくしたことへの不安の慰謝料として、妊婦や子ども一人あたり六十万〜百万円、それ以外の人には十万〜五十万円を支払うよう和解案を示していた。

 蕨平、比曽の二地区の住民側弁護団の秋山直人弁護士は三十日、都内で会見し、「東電は和解案を『尊重する』と誓約していたのに被害実態から目を背けている」と批判。民事訴訟を起こすか検討するという。

 ADR集団申し立てでは、福島県浪江町の住民約一万五千人分の手続きが四月に打ち切り。一方で、飯舘村の長泥地区の住民約百八十人分は、東電が二〇一四年二月に賠償金を支払う和解案を受け入れ、同じ村内でも明暗が分かれている。

 東京電力の小早川智明社長は三十日、都内で取材に応じ「個別に対応していくということで話を進めており、折り合いが付かなかった」とコメントした。

◆続く決裂 仲介制度、揺らぐ意義

 福島第一原発事故で、被災者が東京電力への賠償請求に利用するADR。支払いの迅速化が狙いだったが、集団申し立てでは浪江町の事例に続き、新たに飯舘村でも東電が拒否し、制度の意義が揺らいでいる。

 賠償請求には三つの方法がある。一つは東電への直接請求。東電が国の「中間指針」に沿って、賠償額を決めるが、指針を絶対視して支払いを拒む例がある。

 このため、ADRが利用されている。国の原子力損害賠償紛争解決センターが仲介役となり、申し立てから和解案提示は十カ月程度。被災者の事情に応じて中間指針から賠償金を増額させた和解案を、東電が受け入れれば、計一年程度で賠償金が支払われる。

 しかし集団申し立てでは、東電が「個人で事情が違う」として一律の賠償を拒み、手続きの長期化が目立つ。浪江町の例では五年間に及び、決裂。この間、住民八百人以上が亡くなった。飯舘村では他に約三千人分の申し立てがあるが、手続き決裂が続く恐れがある。住民側弁護団の秋山直人弁護士は、「東電に和解案受諾の法的義務を課す立法が必要だ」と訴える。

 被災者は今後、個別にADRを申し立てたり、裁判を起こしたりできる。浪江町では百人超が裁判の参加を希望。秋にも提訴するが、判決確定まで五年程度かかる見通しで、被災者から「もうあきらめた」との声も上がる。 (小川慎一)

<裁判外紛争解決手続き(ADR)> 裁判を起こさずに、損害賠償を求める手続き。福島第一原発事故では、東京電力への請求で利用。国の原子力損害賠償紛争解決センターに申し立て、受理されると、弁護士などの仲介委員が双方の主張を聞いて和解案を示す。解決までの時間が比較的短く、手続きが簡便なのが特徴。

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