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【社会】

過労死遺族「あきらめない」 働き方法案が衆院通過

 あなたの家族が過労死しても、賛成できますか−。過労死遺族がそう問いかけながら見つめた衆院本会議で三十一日、働き方改革関連法案が可決された。労働時間規制を除外する「高度プロフェッショナル制度(高プロ、残業代ゼロ制度)」に対し、「新たな過労死を生む」と訴えてきた遺族たち。同じように苦しむ家族が増えないようにとの一心で、高プロ阻止に向け最後まで声を上げ続ける考えを強調した。 (石川修巳、松村裕子)

 「ハンターイ」「人の命を奪うな」。野党が机をたたいて抗議する中、法案は衆院を通過した。傍聴席で見守った全国過労死を考える家族の会代表、寺西笑子(えみこ)さん(69)の手には、二十二年前に過労自殺した夫=当時(49)=の遺影が握られていた。

 「労働者や被災者の声を聞かずに、一方的に数の力だけで押し切った。せめて私たちは遺影を持って、過労死した家族がいることを知ってほしくて。それでもやるんですか、って」。仲間と黒い服を着たのも、無言の抗議のためだった。

 「勝手に働いて、勝手に死んだ」。飲食店店長をしていた夫の上司は、そう主張したという。その自己責任の理屈が、「時間に縛られるプレッシャーから外れ、自分のペースで成果を出してもらう」(加藤勝信厚生労働相)という高プロに重なって見えた。

 本会議後の記者会見で、寺西さんは「多様で柔軟な働き方は、過労死をなくす対策を徹底してからでいい。地獄の思いをする遺族を、これ以上つくってはいけない」と語った。遺族の声を直接伝えるため、今後も安倍晋三首相に面会を求め続けるという。

 二〇一三年に過労死したNHK記者、佐戸未和(さどみわ)さん=当時(31)=の遺影を手にした母恵美子さん(68)はこの日、国会で法案の行方を取材する記者たちの姿を見て「未和がいるんじゃないか、と目で追ってしまう」と打ち明けた。「怒号の中で可決する様子に、あなたの娘、あなたの息子に置き換えたらどうですか、と何度も声を上げたかった」

 労働時間規制を外す高プロの場合、過労死なのに労働時間を証明できず、泣き寝入りを強いられる遺族が増えるのではないか、との懸念も出ている。

 〇四年に子ども三人を残し、夫=当時(43)=が過労自殺した小林康子さん(58)は「高プロの仕組みは本当に怖い。なくしたものは、経験者にしか分からない。その苦しみを知った者の責任として、あきらめずに注視していきたい」と語った。

 

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