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【社会】

佐川氏ら全員不起訴 「森友」改ざんなど38人

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 学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざんで大阪地検特捜部は三十一日、虚偽公文書作成容疑などで告発された当時の財務省理財局長の佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官らを不起訴とした。売却価格が八億円余り値引きされた取引を巡る背任容疑についても、交渉時の理財局長の迫田英典元国税庁長官らを不起訴とした。

 財務省による交渉記録廃棄を受けた公文書毀棄(きき)容疑なども含め、財務省本省や近畿財務局、国土交通省大阪航空局などで関わった計三十八人を不起訴とし、捜査を終結した。佐川氏は嫌疑不十分、迫田氏は嫌疑なし。告発した大学教授は来週にも検察審査会に審査を申し立てると明らかにした。

 昨年二月に発覚した森友学園問題は、国の関係者の刑事責任が問われない形で区切りを迎えた。特捜部は官僚が安倍政権の意向を忖度(そんたく)し、大幅の値引きや改ざんをしたとする疑惑について「捜査の内容に関わるので答えられない」としている。

 財務省は六月四日に改ざんの調査報告を公表する方針を固めた。佐川氏らが関与したと認定し、処分する。麻生太郎副総理兼財務相の責任の取り方が焦点となる。

 特捜部は改ざんについて、公文書の作成権限がある公務員が関与した場合に適用される虚偽公文書作成などの容疑で捜査。関係者によると、佐川氏は部下から報告を受け了承したとされるが、立件には改ざん後の文書が虚偽の内容になったとの立証が求められた。

 特捜部は「虚偽の文書を作成したと認めるのが困難」としており、交渉過程や契約方法など、根幹部分に変更はないと判断したとみられる。

 一方、背任容疑の捜査の焦点になったのが、大阪府豊中市の国有地で見つかったごみの撤去費約八億二千万円の妥当性だった。この分が土地評価額から値引きされた。財務局は経験のない大阪航空局に算定を依頼し、過大との指摘もあったが、特捜部は「不適切な積算額と認定するのは困難だった」と判断した。

 学園はごみの存在を理由に国有地で計画した小学校の開校が遅れた場合、国側に損害賠償を請求する意向を示していた。特捜部は「売却で(国が)相当額の賠償義務を免れたことは否定できず、国に損害を与える目的が認められるのは困難」とした。

◆背信の根 責任取らぬ政権

 森友学園を巡る一連の容疑は全て不起訴となったが、財務省側が大規模な文書改ざんや記録廃棄を行った事実は揺るがない。不正の背景に何があったのか。政権中枢の関与や官僚の忖度(そんたく)の有無が公判で明らかにされないのでは、多くの国民は到底納得しないだろう。

 「私や妻が関係していたということになれば、総理大臣も国会議員も辞める」。始まりは、安倍晋三首相の発言だった疑念が拭えない。改ざんにより、学園が開設を目指した小学校の名誉校長を務めた妻昭恵氏に関する記述は全て削除されていた。本省は、改ざんに抵抗する近畿財務局を押し切ったという。改ざんに手を染めたとみられる職員は自ら命を絶った。残したメモには「このままでは自分一人の責任にされてしまう」と悲痛な叫びがつづられていた。

 こうした事態は、官僚が安倍政権を守るために起きたのではないか。首相は「膿(うみ)を出し切る」とひとごとのように繰り返し、麻生太郎財務相は改ざんは「悪質なものではない」と開き直る。省庁の意思決定の過程を記した公文書の改ざんは、歴史の捏造(ねつぞう)に等しい「禁じ手」だと、どれほど真剣に受け止めているのだろう。

 長期政権下で、官邸に人事権を握られた官の忖度は今後も続く恐れがある。前代未聞の国民に対する背信の根は、責任を取らない政権にある。 (藤川大樹)

 

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