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【社会】

全盲エンジニア挑戦 「サイバー攻撃から社会守る」

エンジニアとしてサイバー攻撃に立ち向かう外谷渉さん(右)=東京都千代田区平河町のラックで

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 国や企業を狙ったサイバー攻撃に対抗しようと、全盲のエンジニアが奮闘している。情報セキュリティー会社「ラック」(東京)社員の外谷渉(そとやしょう)さん(31)。「障害があってもIT業界の第一線で活躍できるんだと知ってもらえれば」といい、さまざまな分野で障害者の受け入れが進むことを願っている。 (神田要一)

 左耳にイヤホンを着け、パソコンのキーボードを慣れた手つきでたたく。画面が見えないため、打ち込んだ文字を読み上げるソフトを使い、イヤホンの音声で確認している。

 プログラムに使う専用言語は複雑だ。健常者はテキストを見ながら文字列を入力できるが、外谷さんは記憶しており、そのままパソコンに向かう。複雑なコードも音声ソフトを頼りに打ち込む。同僚は「記憶力が良く、プログラミングも早くて正確」と目を見張る。

 外谷さんはこれまで国や自治体、企業などのシステムが不正な通信を受けていないか分析する「ログ解析システム」の開発に関わった。標的型攻撃でどんな被害を受ける可能性があるか診断するソフト「疑似攻撃マルウェア」も開発。今年二月、「サイバーセキュリティに関する総務大臣奨励賞」を受賞した。

 二〇二〇年東京五輪・パラリンピックを控え、外谷さんは「サイバー攻撃で鉄道や電力などのインフラ、身近なスマートフォンやパソコンが使えなくなったら、社会はパニックになる。安心安全なインターネット環境を守りたい」と意気込む。

 外谷さんは盛岡市出身。眼球に腫瘍ができる小児がんで、生後間もなく視力を失った。幼稚園から高校まで岩手県立盲学校(現盛岡視覚支援学校)に通い、高校二年の時、脳に別の腫瘍ができ、右耳も聞こえなくなった。

 転機は中学生の時。担任の先生から、数学の授業などでプログラミング言語を教わり、夢中になった。パソコンで簡単なプログラムを入力し、ブザー音を鳴らす遊びで腕を磨いた。

 「プラモデルのように形のあるものを作るのは難しいけど、プログラムなら自由に操れる」と感じた。

 高校を卒業後、日本福祉大(愛知県)に進学。ITを学び、視覚障害者の採用実績があったラックの前身企業に入社した。最初はシステム管理を担当し、情報処理安全確保支援士などの資格を取得。入社四年目にシステム開発部門へ異動した。

 今年で社会人十年目。障害のある人たちに、こう呼び掛ける。「さまざまな分野に挑戦し、実績を重ねてほしい。そうすることで、障害者の職業選択の幅が広がるはずだから」

 

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