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【社会】

<取材ファイル>捜査トップが会見で涙… 結愛ちゃんのノート

船戸結愛ちゃんが住んでいたアパートに供えられた花や菓子=7日、東京都目黒区で

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 ペンを走らせる手が止まった。警視庁の小林敦捜査一課長(59)の声が震えていた。ノートから目を上げると、課長の眼(め)は真っ赤。右手でハンカチを取り出し、あふれそうな涙を押し戻すように両目をぬぐっていた。

 六日、東京・桜田門の警視庁本部にある捜査一課長室。船戸結愛ちゃんの両親を保護責任者遺棄致死容疑で逮捕した緊急会見の途中だった。

 課長は逮捕の経緯などをいつものように淡々と説明していた。涙を見せたのは会見後半。結愛ちゃんの体重が一二キロしかなかったことに触れ、「手書きのノートが残っていた」と明かした。「五歳の子には到底苦痛とも言える…」

 課長は結愛ちゃんの文章を読み上げた。「もうパパとママに…」。涙をこらえ、途中からは同席した刑事に読み上げさせた。捜査一課といえば、殺人や強盗などの凶悪犯罪と戦う組織。歴戦の刑事たちを束ねるトップが涙を見せるとは…。

 「あしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして」「あそぶってあほみたいだからやめるので もうぜったい、ぜったいやらないからね」。両親に愛されたい。ただそう願う結愛ちゃんの純粋な言葉の数々に胸が詰まった。今回、一課が押収したノートは、虐待を日常的に繰り返していたことを裏付ける重要な証拠になる。

 警察のつかんだ証拠が会見で明かされるのは、ごくわずか。どんな情報を出すか出さないかで、世論を誘導することも可能だ。実際、ノートの記述がいつ始まり、何冊になるかなどは明かさなかった。警察組織と日々向き合う記者として、その涙を凝視せざるを得なかった。

 翌日、今回の文章を読み上げ、涙を見せた理由を、課長に聞くと「もう、その話はいいから」と突っぱねられた。いつもの刑事の眼だった。 (木原育子)

 

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