東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 6月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

強制不妊 聴覚障害3人が提訴へ 70人被害可能性

不妊手術問題で、手話で記者会見し国に損害賠償を求める訴訟を起こす考えを表明した高木賢夫さん(右)、妙子さん夫妻=9日午後、大阪市で

写真

 旧優生保護法(一九四八〜九六年)下の障害者への不妊手術問題で、聴覚障害のある神戸市の夫婦と福岡市の女性の計三人が九日、国に損害賠償を求める訴訟を起こす考えを表明した。全日本ろうあ連盟(東京)は同日、初の被害実態調査に関する中間まとめを公表。十一道府県の男女七十人について、不妊手術や人工妊娠中絶を強制された可能性があるとの回答が寄せられていると明らかにした。今後さらに被害の訴えが増える可能性があり、国の対応が問われそうだ。

 旧法を巡る国家賠償請求訴訟で、聴覚障害者が提訴すれば初となる。九日に連盟が大阪市中央区で開いた記者会見で、手話を通じて提訴の意向を表明したのは、神戸市に住む高木賢夫さん(79)、妙子さん(77)夫妻と、福岡市の吉瀬陽子さん(76)の三人。

 高木さんは、一九六八年ごろに手術を強制されたと説明。「今まで五十年間黙ってきた。国は謝って、賠償してほしい」と訴えた。妙子さんは手術を受けていないが「他の人の子どもを見て『うらやましいな』と苦しい思いをしてきた」と明かした。

 また吉瀬さんは結婚が決まる約二週間前、夫の渉(わたる)さん(80)が手術を受けたとし「このようなことが二度と起こらないように、差別のない世の中を願って実名を公表した」と意欲を示した。

 連盟によると、五月二十五日までの二カ月間の調査に「被害可能性あり」と回答した七十人の内訳は、男性十八人、女性五十二人。手術別では「断種」十三件、「不妊」二十件、「中絶」十四件。手術を受けた可能性はあるが、内容までは判然としないという「不明」は二十四件だった。一人で複数回手術を受けたとしている人もいるという。

 連盟は、被害実態をより詳細に把握するため、当初五月末としていた期限を八月末に延長して調査を続け、回答内容を精査する。

 国賠訴訟は宮城県と北海道、東京都の男女計四人が原告となっている。

<全日本ろうあ連盟> 耳が聞こえず、発語がないため手話言語を主体とする聴覚障害者の全国組織。1947年創立で2018年3月末時点の会員は約1万9000人に上る。運転免許資格の獲得、差別法規撤廃などの運動を行い、現在は手話を言語と認める「手話言語法」制定を目指している。旧優生保護法は、聴覚障害者も不妊手術や人工妊娠中絶の対象としていたため、被害実態の解明に向け全国調査を進めている。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】