東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 社会 > 紙面から > 6月の記事一覧 > 記事

ここから本文

【社会】

安全策の限界露呈 利便性とジレンマ 新幹線切り付け3人死傷

JR東海が新幹線の客室内に設置している防犯カメラ=2016年2月、JR東京駅で

写真

 便利さか、安全か−。東海道新幹線で起きた3人殺傷事件は、3年前の放火事件をきっかけに導入された安全策に限界があると改めて印象付けた。すぐに乗れる高速列車であることを維持しつつ、逃げ場のない「密室」での凶行をどう防ぐのか。JR各社はジレンマに直面している。

 ▽静寂破り

 事件が起きたのは土曜夜の東京発新大阪行きの最終列車。行楽地や、人気韓流スターのコンサートから帰途に就く人たちの姿があった。

 新横浜を発車し、名古屋まで一時間余り。小島一朗容疑者(22)がリュックから、なたを取り出すと、静寂が破られた。

 「助けて」。泣き叫びながら逃げ出す乗客たち。車両の連結部分で、折り重なるように倒れた。フィリピンからの観光客パディ・アクールさん(40)は「日本でこんなテロが起きるのか」と声を震わせた。

 七十一歳だった男が焼身自殺を図り、居合わせた女性客が死亡した二〇一五年六月の事件を受け、JR東海が進めてきた安全策の限界が露呈した瞬間だった。

 「見せる防犯という観点で抑止効果がある」として客室内に設置してきた防犯カメラに、乗務員らによる見回り強化、「不審な行為」の通報呼び掛け…。「強固な殺意があれば、何でもできる。新幹線でも街中でも、それは同じ」と、担当者は頭を抱える。

 ▽優先

 海外では、主要駅で荷物検査を実施している高速鉄道もある。ドーバー海峡を挟み、英国とフランス、ベルギーを結ぶ「ユーロスター」はパスポートチェックの際に実施。スペイン、ロシア、韓国でも実績がある。

 日本はどうか。JR各社は近年、スマートフォンやICカードで「すぐに、簡単に乗れる」とアピールしている。手荷物検査の実施を求める声も上がるが、駅構内が狭く、検査スペースの確保が難しい上、利便性の低下は必至だ。

 東京−新大阪間で一日平均三百六十五本、約四十五万人が利用する高頻度運行が定着しており「導入は難しいだろう」と利便性優先を理解する乗客の声も聞かれる。

 ▽マンパワー

 東京五輪・パラリンピックの開幕を二年後に控え、公共交通機関の安全向上が求められる中、打つ手はないのか。

 警察庁は十日、全国の警察本部に、列車や駅での警戒警備の徹底を指示した。担当者は「今回のような事件を防ぐのは難しい。鉄道事業者の努力なしには状況を改善させるのは困難だ」と漏らす。

 安部誠治関西大教授(交通政策論)は「当面は巡回強化などマンパワーでカバーせざるを得ないが、改札などで短時間に危険物を検知できるようにする必要がある」と新システム開発に期待を寄せる。

 日本大の松本陽教授(鉄道安全工学)は「可燃物や火薬などを簡易的にチェックするシステムの導入が考えられるが、利便性の低下は避けられず、利用者のコンセンサス(合意)を得ながら進めることが必要だ」と強調した。

 

この記事を印刷する

東京新聞の購読はこちら 【1週間ためしよみ】 【電子版】 【電子版学割】

PR情報