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【社会】

豊洲騒動 20分の決断 小池都知事、迷走のち謝罪

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 「心から申し訳ないと思います」。今年10月に築地市場(東京都中央区)から移転する豊洲市場(江東区)の観光拠点「千客万来施設」を巡り、小池百合子知事(65)は5月30日、事業者と極秘会談し、2度目の謝罪を行った。席上、小池氏は事業者との協議を打ち切る方針を一転させ、事業を継続すると即決した。関係者への取材から、急転直下の内幕に迫った。 (川田篤志)

 横浜・みなとみらいの高層ホテル。小池氏が都幹部ら三人を連れ、二十三階の一室に入ったのは午後七時半ごろだった。部屋では、事業者の万葉倶楽部(くらぶ)(神奈川県小田原市)、高橋弘会長(82)が待っていた。

 眼下には、観光客らが利用する同社の温泉施設が立つ。「ちょうどよくうちが見えますよ」。こう水を向けた高橋氏に、小池氏は「豊洲(市場)でさまざまな課題があり、万葉さんをほったらかしにしたような形になった。おわび申し上げたい」と謝罪した。

 すると高橋氏は「分かってもらってありがたい」と納得し、新たな提案を行った。二〇二〇年東京五輪・パラリンピックの間は都が臨時のにぎわい施設を運営し、建設ラッシュが終わって工事価格が下がる五輪後に同社が観光拠点を整備する−。この提案を小池氏はその場で了承し、二人はがっちりと握手した。会談は約二十分。二人が会うのが決まったのは、この日午前という慌ただしさだった。

 問題の発端は昨年六月。小池氏が発表した築地市場跡地に食のテーマパークを造る構想だ。同社は豊洲の施設と競合すると反発、知事の謝罪と構想の撤回を求めた。二人は五月一日にも対面。小池氏は報道陣に「誤解を与えたことを謝罪した」と述べたが、高橋氏は「非を認めない」と知事の姿勢に憤った。

 交渉が難航する中、都の現場レベルは同社との事業白紙化はやむを得ないとみて、極秘会談までに、地元の江東区に、協議を打ち切った場合は事業者を新たに公募すると伝えた。観光拠点の整備は、区が豊洲市場を受け入れる際の条件の一つ。「手ぶらで説明しても納得してもらえない」(都幹部)。もう一つの受け入れ条件だった有楽町線の豊洲−住吉間延伸についても、本年度中に「事業スキームの構築に向け取り組んでいく」と文書で伝えた。

 区によると、五月三十一日には副知事らが区を訪問し、区側に白紙化への了承を求める予定だった。しかし、小池氏は周囲に諮らず、前夜の極秘会談で方針転換し、三十一日に区を訪れて事業継続を説明した。「急な展開で判断しようもない」。山崎孝明区長は戸惑い、区議会からは不透明な交渉に批判の声が上がった。

 関係者によると、小池氏は会談直前まで判断に迷っていた。協議を打ち切り、新たに公募しても着工まで一年以上。手を挙げる事業者がいるかは不明確で、政治判断の責任も問われる。「リスクを踏まえて判断したのでは」と推測する。

 ただ、同社と文書合意はしておらず、区の了承も必要で最終決着ではない。合議でない即断の都政運営は今までもあった。都幹部はため息を漏らす。「小池知事らしい判断。われわれは従うだけだ」

<千客万来施設> 豊洲市場内の一角に整備予定の観光拠点。万葉倶楽部の事業提案によると、1・1ヘクタールの土地に170以上の飲食・物販店が入る商業ゾーンや、24時間営業の温泉とホテルを整備。来場者数は商業ゾーンで年間約138万人、温泉・ホテルで約55万人を見込んでいた。当初は昨年1月に着工、来年8月に全面開業の予定だった。

 

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