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【社会】

刑事免責で初証人尋問 東京地裁公判 覚醒剤密輸、共犯に

 中国から覚醒剤を密輸したとして、覚せい剤取締法違反(営利目的輸入)などの罪に問われた中国籍の住所不定、無職林伯珠(りんはくじゅ)被告(22)の裁判員裁判で、証人に不利益な証拠として使わない代わりに証言を強制する「刑事免責制度」を初適用した証人尋問が十九日、東京地裁で行われた。

 共犯として起訴された中国籍の陳豪超(ちんごうちょう)被告(24)が証人として出廷。家令(かれい)和典裁判長が冒頭、うその証言をしないと宣誓した証人に対し、「今回の尋問での供述や供述に基づく証拠は、あなたの裁判で不利な証拠として使うことはできません。その代わり、あなたが有罪となる可能性がある内容の証言を拒むことはできません」と伝えた。

 検察側は、林被告が陳被告に指示し、埼玉県内の別の中国人宅に送られた覚醒剤入りの国際郵便を回収させたと主張。証人尋問で陳被告は「林さんから代わりに荷物を取りに行ってほしいと頼まれた。中身は洋服だと言われた」と答えた。

 林被告は、十八日の初公判で「郵便物の中身が覚醒剤だとは知らなかった。陳被告と覚醒剤の回収の話をしたことはない」と無罪を主張している。

◆強制証言 義務付け 事前取引の危険性も

 刑事訴訟法などの改正で、司法取引制度とともに一日から運用が始まった刑事免責制度。十九日の裁判員裁判での証人尋問で初適用された。

 司法取引は、他人の犯罪を供述することで、起訴の見送りや軽い求刑などの見返りを求める。組織犯罪や経済犯罪などの事件が対象で、本人や弁護人の同意が必要になる。

 刑事免責は、刑事裁判に出廷した証人に対し、自身の刑事事件の証拠として採用しないことを条件に証言を義務付ける。検察側が請求し、裁判所が決定する。対象犯罪に制限がなく、本人の同意は必要ない。証人が虚偽証言や証言拒否をした場合、偽証罪(三月以上十年以下の懲役)や証言拒絶罪(一年以下の懲役または三十万円以下の罰金)に問われる可能性がある。

 これまでの公判では、証人として出廷した共犯者が証言を拒むことができた。制度の導入により、捜査関係者は「真相究明に役立つ」と期待する。

 一方で、証言者が無実の人を共犯者に引き込んだり、共犯の被告に責任転嫁する危険性が指摘されている。制度に詳しい弁護士は「検察側と事前に取引し、虚偽供述する危険性もある」と話す。

 公判では、国際郵便に覚醒剤が入っていたことを林被告が認識していたか、証人の陳被告と事前の共謀があったかなどが争点。受け取り役として起訴され、共犯である陳被告の証言が信用できるか、被告側がどのように反論するかが注目される。

 (山田祐一郎、蜘手美鶴、山田雄之)

 

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