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【社会】

「長時間労働、指導できない」 元監督官 違法適用の摘発も「困難」

 「高度プロフェッショナル制度」に対し、違法な働かせ方を取り締まる労働基準監督官の経験者からは「過労死につながる長時間労働は増えるが、指導はできない」との懸念が上がる。

 「高プロは長時間労働の指導そのものを除外する制度。長時間労働があったとしても、会社側を指導したら、高プロはそういう制度なんだと言われるだけ」

 東京などで十九年間、労働基準監督官を経験した社会保険労務士の原論(さとし)さん(49)は、高プロの監督指導の難しさを指摘。「監督官が実質的に確認するのは、休日取得などの過重労働対策の項目を実施しているかどうか、形式的な部分だけに絞られてしまう」とみる。

 二十八年監督官を務めた社労士の八木直樹さん(57)も「高プロは割増賃金がいらず、いくら働かせてもコストが発生しない。会社側が設定する業務量の規制もなく、ずるずると長時間労働になる」と危惧する。

 さらに、高プロ対象外の社員への違法適用を摘発する難しさも。高プロの対象とされるコンサルタントや研究開発業務に該当するかどうかについて「会社によって職務は千差万別。監督官が見極めるには個別に調べる必要があり、時間がかかる」。会社側の説明任せになる恐れがあるという。

 野村不動産が営業活動の社員らに裁量労働制を違法に適用した問題で、特別指導のきっかけは五十代男性社員の過労自殺だった。

 「監督官にも年間のノルマがあり、数をこなさないといけない。過労死などの労災申請や本人の申告がなければ、(定期監督で)違法適用を見抜くのは現実的には不可能」と八木さん。厚生労働省によると、監督の対象となる事業所は全国に約四百万あるが、労働基準監督官は約三千人。現場からは高プロについて「監督官泣かせ」との声が聞こえる。 (石川修巳)

 

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