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【社会】

潜伏信仰 語り継ぐ 世界遺産決定 20年近く啓発活動

世界遺産を目標に啓発活動をしてきた「かくれキリシタン」の末裔の柿森和年さん=長崎市で

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 次の世代に価値を引き継いでいくためにも、潜伏期の信仰の在り方を、より深く解き明かしたいと思っている。「かくれキリシタン」の末裔(まつえい)で世界遺産を目標に二十年近くにわたり啓発活動をしてきた、長崎県五島市の柿森和年さん(71)。「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の文化遺産登録を受け、感慨とともに次の歩みを進める。

 登録を決めた国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会の審査を、長崎県庁の大型モニターで見守った。委員会メンバーの国々が価値を高く評価する様子に「信徒の生きざまは、世界に訴える力があった」と目を潤ませた。

 かくれキリシタンとは、江戸時代の禁教令が明治時代初期に解けた後も、弾圧下での信仰形態を続けた信徒を指す。母方の祖父は五島列島・奈留島(なるしま)に暮らし、構成資産がある江上集落とは別の地域で「かくれ」の指導者的立場だった。母も就寝前につぶやきながら祈っていたが、内容は分からなかった。

 長崎市で育った柿森さんは、二十歳でカトリック教徒に。同市職員時代の二〇〇〇年、仕事を通じて知り合った写真家と協力し、長崎県の教会を中心に紹介する写真集を出した。地元の信仰を多くの人に知ってほしかった。翌年には「長崎の教会群を世界遺産にする会」を立ち上げ、事務局長に就任。県内や首都圏でPRイベントを開いた。

 「遺産登録は無理だろう」。活動当初、周囲の声は多くが冷ややかだったという。それでも「潜伏期の信徒も、自由に信仰できる日が来るのを長く待ち続けた」と自分に言い聞かせた。カトリックの総本山バチカンにも出向いてアピール。地道に取り組みを続けた。

 一五年、政府がユネスコへ長崎の教会群を推薦するところまでこぎ着けた。だがユネスコ諮問機関は、禁教の歴史に注目するよう指摘。推薦内容が見直され、世界遺産委員会の最終審査に臨むのは二年遅れた。「的を絞り、分かりやすくなった」と受け止めた。

 大学教授らと共に「禁教期のキリシタン研究会」を二年ほど前につくった。ふるさとの奈留島を拠点に、今は調査活動に軸足を置く。資産の保全継承と意義の発信に、潜伏期の実態解明が不可欠と考えている。

 「潜伏キリシタンに興味を持つ人が増え、地元の人が祖先に誇りを持つようになればうれしい。長い間、なぜ信仰し続けることができたのか。語り継げるようにしたい」

 

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