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【社会】

オウム事件の被害者・遺族 「過去にしないで」「もっと話してほしかった」

麻原彰晃死刑囚らの刑が執行され、記者会見する地下鉄サリン事件被害者の会代表の高橋シズヱさん(手前)=6日午前、東京・霞が関の司法記者クラブで

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 麻原彰晃死刑囚らの死刑執行を受け、オウム真理教の一連の事件による犠牲者の家族や知人は「いつか来ると思っていた」と受け止める一方、事件の風化を危惧した。

 一九九五年の拉致監禁致死事件で目黒公証役場事務長の仮谷清志さん=当時(68)=を亡くした長男実さん(58)は六日朝、通勤中にマスコミから電話を受け、すぐに「死刑執行が頭をよぎった」という。「父とは一心同体なので、仏壇に報告しなくても父にはそのまま伝わっていると思う」

 事件に関わった三人の死刑執行に「裁判の終結から半年で、適切なタイミングと感じる。執行されてよかった。ありがたい」と話し、「あっという間の二十三年間だった。結果的に真実は分からなかったけど、それは結果論」と述べた。

 八九年に妻子とともに殺害された坂本堤弁護士=当時(33)=と一緒にオウム真理教からの脱会活動に携わり、オウム真理教被害対策弁護団事務局長を務める小野毅弁護士は「この日がいつか来ると思っていた。麻原死刑囚の執行は仕方ないが、他の死刑囚は執行回避を求めていたのでショックだ」と複雑な心境を語った。

 「坂本一家事件から二十九年が過ぎたが、過去の問題にされるべきではない」と強調。「なぜこうしたカルト団体ができ、有能な若者が入信し、犯罪に手を染めたのか。どうしたら防げたか。国には総括をしてほしい」と語った。

 坂本さんの妻都子(さとこ)さん=当時(29)=の母親の大山やいさん(84)は「いろんなことに遭いましたから。今は何も言いたくありません」と疲れた様子で話した。

 十三人が死亡した九五年の地下鉄サリン事件で夫を亡くした高橋シズヱさん(71)は、東京・霞が関の司法記者クラブで会見。六日朝、麻原死刑囚の死刑執行は「当然」と受け止めた一方、他の六人の執行は「聞いた時には動悸(どうき)がした。彼らにはテロ防止のためにも、もっといろいろなことを話してほしかった。それができなくなってしまったという心残りがある」と述べた。

 事件について講演などで語り続けてきた高橋さんは「風化という言葉には拒否反応がある。遺族にとって風化は決してない」と強調。「思い出す機会が減るのは仕方がないが、再発防止に生かされれば風化にはならない」と語った。

 脱会信者の支援に取り組んできた滝本太郎弁護士は六日、ブログで「松本智津夫死刑囚の死刑が執行された。立ち会えなかった、残念です」「現役信者さんには、『麻原彰晃という人はもともと存在しなかったんだよ』と伝えたい」と書き込んだ。

 九四年の松本サリン事件で当初、容疑者扱いされた河野義行さん(68)は四月の本紙の取材に「麻原死刑囚は否認しているが、控訴審もしていない。真実に迫るためには控訴審が必要だったのではないか。(起訴内容が)本当に事実かと疑問が出ても不思議ではない」と述べた。「命は大切なものだから死刑そのものには反対だ」とも話していた。

 

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