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【社会】

真相語らず…残念 オウム事件元捜査員、死刑執行に複雑

オウム真理教の事件の捜査や麻原彰晃元死刑囚の死刑執行について思いを語る元警視庁刑事の原雄一さん=6日、東京都内で(坂本亜由理撮影)

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 オウム真理教元代表の麻原彰晃(しょうこう)元死刑囚(63)=本名・松本智津夫(ちづお)=ら教団元幹部七人の死刑が六日に執行され、事件を捜査した警視庁元刑事らは「真相を語らずに逝ってしまったことは残念」「なぜ過ちが起きたのか、考え続けなければ」と複雑な思いを打ち明けた。 (木原育子)

 「ついに来たか…」。一連のオウム事件捜査に長く関わった元警視庁捜査一課刑事の原雄一さん(61)は六日、テレビのニュースを食い入るように見つめた。脳裏を、さまざまな記憶が駆け巡った。

 一九九五年五月、猛毒のサリンを製造していた山梨県上九一色村(現在の甲府市と富士河口湖町)の教団施設に入り、天井裏の隠し部屋で麻原元死刑囚を発見。下ろす際に「重くてすみません」と言われた。

 残忍な事件の一方、若い信者が「家族に迷惑をかけたのに今さら帰れない」と泣く姿や、教団施設で無邪気に遊ぶ信者の子どもたちの姿も目にしていた。

 「麻原死刑囚らが真相を語らずに逝ってしまったことは、捜査に従事した一人として大変、残念だ」と話した。

 二〇一六年に退職した後も遺族や被害者と交流を続けてきた。「遺族や被害者にとって、死刑執行は大きな節目になったのではないか」と思いをはせた。

 ◇ 

 警視庁機動捜査隊から事件の捜査に加わった稲冨功さん(71)も、死刑執行を報じるテレビのニュースにくぎ付けになった。

 地下鉄サリン事件の実行犯で、教団元幹部の林郁夫受刑者(71)=無期懲役が確定=の取り調べを担当。林受刑者と昨冬まで手紙のやりとりや面会を重ね、「その時が来ても冷静を保ってください」と伝えていた。

 取り調べは、地下鉄サリン事件発生の三週間後から。林受刑者は信者の監禁容疑で逮捕されていた。麻原元死刑囚を崇拝するマインドコントロールの状態を解き、心臓外科医だった入信前に戻ってほしいと、林受刑者を「先生」と呼び、丁寧に語り掛けた。

 話を聞く際、心臓の鼓動と同じリズムで机を指でたたくなどして、相手の心を開くための工夫をした。林受刑者は一カ月後、「サリンをまいた」と自供。他の実行役の名前も明かし、一連の事件を全容解明に導く突破口になった。

 六日の死刑執行について「法に定められた通りに執行されただけ」と淡々と話す稲冨さん。林受刑者らを念頭に「動揺するかもしれないが、しっかりと服役してほしい」との願いを語った。

 そして「執行で終わりではない。なぜ過ちが起きたのか、考え続けなければ同種の事件はまた、形を変えて噴き出す。絶対に忘れてはいけない」と語気を強めた。

 

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