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【社会】

<オウム事件死刑執行 妄想の果てに> (中)居場所探す若者、今も

1995年、道場で修行するオウム真理教の信者たち=東京都世田谷区で

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 「『え、うそっ』といった心境で、ただ黙り込んでしまった」

 関西在住の元オウム真理教信者の女性(48)は六日朝、大雨の影響が気になり、自宅でテレビを見ていた。画面にテロップが流れ、元代表麻原彰晃元死刑囚ら七人の刑の執行を知った。一人娘と二人暮らしで、教団とは無縁の生活を送る女性に、過去の記憶が頭にもたげた。

 九歳の誕生日の一週間前、母親が家を出て行った。成長するにつれ生きている意味が分からなくなり、何度も自殺未遂をした。友人に誘われ入信したのは一九九〇年のバブル時代。二十歳でアルバイト暮らしだった。オカルト雑誌を読んで麻原元死刑囚のことは知っていた。

 教団内部では、信者らが悩みに耳を傾けてくれ、自分の存在が認められたと感じた。「自分の居場所を見つけた気がした。世間で生きる方がよほど厳しくてつらいから」。イニシエーションと呼ばれる儀式で、麻原元死刑囚の前で、幹部からワイングラスに液体を注がれた時は誇りに感じた。九五年の地下鉄サリン事件も、当時の多くの末端信者と同じように、国家権力の陰謀だと思っていた。

 女性はオウム真理教の後継団体「アレフ」を経て、アレフから分裂した「ひかりの輪」に入信したが、七年前に脱会。公安調査庁の立ち入り検査の前に、麻原元死刑囚に関係するものを隠すよう指示され、これまで積もっていた不信感が爆発した。「表向きの『オウムと決別して社会と融和する』という理念とやっていることとが違いすぎて、嫌気がさした」

 アレフには今も多数の信者が残り、事件を知らない世代を中心に、年間約百人の新規入信者がいる。公安調査庁によると、最近では、会員制交流サイト(SNS)を使い、ヨガ教室やスポーツイベント、食事会を装って知り合った人を勧誘しているという。

 北海道大学でカルト問題の相談を受ける桜井義秀教授は「友人関係や勉強、仕事などで問題があっても相談できないなど、社会で居場所がない若者の受け皿になっている」と話す。

 女性は「若い人が入信する姿は自分を見ているよう。今は居心地はよくても、その先には夢も希望もないのに…」と気をもむ。

 今も、修行にのめり込む自分の姿を夢で見て、夜中にうなされることも。「自分のお布施もサリンやVXを作る費用の一部になったんじゃないか」と罪の意識に苦しんでいる。

 

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