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【社会】

豪雨9府県 特別警報 避難直結せず

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 西日本を中心とした記録的な豪雨。気象庁は過去最多となる九府県に大雨特別警報を出し、最大級の警戒を求めた。自治体も住民に避難を呼び掛けたが、増水した川に近づいたり、避難せずにとどまった自宅で土砂崩れに巻き込まれたりして多数の死者、安否不明者が出た。予想を超える自然の猛威から、どう命を守るか。行動につながる伝達方法に課題を残した。 

 ▽伝達

 「まさか、自分の街に特別警報が出るなんてと思いました」。広島県東広島市役所で職員が声を落とした。市内では市役所から約二キロの地点を含む複数箇所で土砂崩れが起き、中には死者が出たり、安否不明者の捜索が続いたりする現場もある。

 市が災害対策本部を設置したのは五日夕。市内の一部河川が避難判断水位に達したためだった。

 ほぼ同時に出した避難勧告に続き、六日午後七時四十分に大雨特別警報が出た五分後には全域に避難指示を出した。だが、防災無線がなく、市の伝達手段は地元のFMラジオ局による放送や登録者だけに届く防災メール、ホームページしかなかった。犠牲者、安否不明者に情報が届いていたのかは分からない。辺りは暗くなっていった。

 ▽数十年に一度

 六日夜、東京・大手町の気象庁。福岡、佐賀、長崎各県に大雨特別警報を出し、発表した予報課の梶原靖司課長は「経験したことのないような大雨で、重大な危険が差し迫った異常事態だ。土砂崩れや浸水による重大な災害が既に発生していてもおかしくない」と説明した。普段よりもゆっくりとした口調だった。

 ここに至るまで気象庁は表現を強めながら豪雨への警戒を呼び掛けてきた。五日午後には「警報級の警戒が必要な期間が続く見通し」と説明し、六日午前には「重大な災害の発生する恐れが著しく高くなり、特別警報を発表する可能性がある」と踏み込んだ。

 特別警報は二〇一一年の紀伊半島豪雨などで危険性を十分に伝えられなかったとの反省から一三年八月に運用を始めたものだ。警報の発表基準をはるかに超える「数十年に一度の現象」を基準に発表し、都道府県は市町村に伝えるための措置、市町村は住民に伝えるための措置をとらなければならなくなった。警報では努力義務にすぎない。

 気象庁のホームページを見れば特別警報の発表情報だけでなく、土砂災害警戒情報が見られる。トップ画面の「この雨大丈夫?そんな時 危険度分布」のバナーから、身近な河川で洪水の恐れがあるかどうかも分かる。

 ▽意識

 だが、それでも大勢の犠牲者が出た。ある職員は「被害を防げなかった。自分の身が危ないと分かってもらえなかったのかもしれない」とつぶやいた。

 洪水や土砂災害の被害防止を専門とする関西大の石垣泰輔教授は、避難せずに自宅で土砂災害に遭った人や車で移動中に濁流に襲われた人がいた点を挙げて「特別警報と、自分に危険が迫っていることがつながらないのでは」と指摘する。

 石垣氏は小学校などで水に囲まれた想定の車から脱出したり、流れのある水の中を歩く体験学習を行ったりしている。「言葉やテレビ映像ではなく自分で体験すれば災害の恐ろしさがよく分かる。子供はもちろん大人も意識が変わる」という。

 

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