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【社会】

西日本豪雨 濁流の夜、励まし合い 高齢者施設緊迫

約150人が孤立した老人ホーム「シルバーマンションひまわり」で作られたSOSのサイン=7日、岡山県倉敷市真備町地区で

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 水が引くと、泥にまみれた無残な町の姿が現れた。九日朝にかけ西日本豪雨の被災各地で、深刻な状況が明らかに。犠牲者は百人を超えた。太陽が照りつける厳しい暑さ。捜索活動は一刻を争い、懸命に続く。「どうか早く」。父の行方が分からない女性は目を腫らして見守った。寸断されたままの道路。被害の全貌はいまだ見えず、「水も食料も尽きそう」と不安の声が漏れた。

 堤防の決壊で全面積の約三割が浸水した岡山県倉敷市真備(まび)町地区では一帯の推計約四千六百戸が水に漬かった。「パジャマのまま逃げて」。濁流が押し寄せた老人ホームでは六日深夜から、とっさの判断で高齢者を避難させた。だがその後は孤立状態に。救助を待つ間、職員や避難者らが夜通しで協力し緊迫した状況を乗り切った。

 六日午後十時半すぎ、真備町川辺の老人ホーム「シルバーマンションひまわり」に勤務する小野可津子さん(51)のスマートフォンに緊急連絡網のメッセージが届いた。近くの系列施設の入所者を三階建てのひまわりに避難させるとの内容。自宅から慌てて車を走らせた。この時点で道路は走行できる状態。ひまわりも浸水していなかった。

 系列施設に九年前から入居する男性(74)は六日午後十一時ごろ、職員から「着の身着のまま、ひまわりに逃げてくれ」と告げられた。

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 ひまわりのエレベーターは停止しており、職員が数人掛かりで体の不自由な高齢者を運んだ。窓の外では、周辺の水位が一気に上昇し、車がみるみる水没していった。やがて水は二階まで上がってきた。

 普段は十七人しか暮らしていない三階には近くの住民も含め約百五十人が身を寄せ、ぎゅうぎゅう詰めに。「ものは考えようだね」「命があるから良かった」。悲観的な気持ちになるまいと、みんなで声を掛け合った。トイレに使う水は、高い建物が少ない周辺地域から避難してきた男性らがバケツリレーで階下から運んだ。

 消防などの救助活動は夜を徹して続いたが、ひまわりには夜が明けても来なかった。系列施設の入居女性(85)は七日朝におかゆを食べたきりで、おなかがぺこぺこ。スタッフや避難者らが、白いシーツに粘着テープで「150人! 水 フード」と貼り付けてSOSのサインを作り、ヘリコプターの音がするたびに手を振った。

 七日午後になってようやく自衛隊のボートが到着。かっぱと救命胴衣を身に着けた避難者らは三階の非常階段から、抱えられるようにして運び出された。十人ほどが乗れるボートが何往復もして、ようやく全員の救助が完了した。

 小野さんは「最近やった避難訓練が役に立った。大変だったが、みんながお互いを思い合って行動していたのが良かった」と胸をなで下ろした。

 

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