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【社会】

西日本豪雨 砂浜掃除で集落支え…慕われた男性死亡 愛媛

泉秀文さんが毎日清掃していた砂浜。土砂やがれきで埋まっていた=10日、愛媛県宇和島市で

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 宇和海の静かな入り江に面した小さな集落を土砂が襲った。西日本豪雨で大きな被害が出た愛媛県宇和島市吉田町白浦。泉秀文さん(64)=写真=は、近隣住民から頼られ、地域の支えになっていた。小学校の同級生らによる必死の捜索もむなしく犠牲に。海や魚が好きで、毎日ごみを拾って大切にしていた自宅前の小さな砂浜は、水が濁り、がれきが散乱した。

 七日朝、近くに住む六十代女性は、爆弾が落ちたような大きな音を聞いた。外を見ると、土砂が住宅街をのみ込み、一部の家は海まで押し流されていた。庭にある池のコイを見に外に出た泉さんも巻き込まれた。

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 「ひで! ひで!」。一緒に暮らす泉さんの娘が家の中から名前を何度も呼ぶ。「うそだとしか思えなかった」と女性は声を震わせた。

 「絶対見つけてやるけん」。小学校の同級生、谷口定文さん(64)は消防団を引退していたが、居ても立ってもいられず、七日から捜索に当たった。

 水を含んだ泥は重く、スコップではかき出せない。谷口さんが重機を操作し、消防隊員らと懸命に捜し続けた。

 九日午前、泉さん宅の玄関にあったコンクリートブロックを動かすと、人の頭が見えた。重機で傷つけてしまわないように、注意深く土砂を取り除く。消防隊員らが引っ張り出したが、死亡が確認された。

 宇和島市役所を勤め上げた後、非常勤で働いていたという泉さん。頼りがいがあり、住民らから慕われていた。自宅前に広がる砂浜はごみがたまりやすい地形だったが、泉さんが毎日掃除をするようになってからきれいになり、住民らは喜んでいた。

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 同級生からも「仕事ができる」と評判で、二、三年に一度開いていた同窓会の取りまとめ役だった。東京五輪が開催される二〇二〇年には、同級生でまた集まるはずだった。

 泉さんは亡くなる数日前、谷口さんが取ったナマコを泉さんの家に持って行ったお返しにと、魚を釣って持ってきてくれた。「本当に優しいやつなんよ」。旧友は目を細める。

 「真面目な人だった。あんなに良い人が、こんな亡くなり方をするなんて」。近所の女性は涙を浮かべた。

 

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