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【社会】

<原発のない国へ 基本政策を問う> (2)金食い虫 企業も見切り

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 米ニューヨーク・マンハッタンの西を流れるハドソン川。摩天楼の足もとから五十キロほどさかのぼると、景勝地として名高い渓谷に二基の原子炉が並ぶ。電力会社エンタジーが計画を十四年前倒しし、二〇二一年までに閉鎖することでニューヨーク州と合意したインディアンポイント原発だ。

 「ニューヨーカーの安全と健康を守るためだ」。一七年一月に合意を発表したクオモ州知事は、世界有数の人口過密都市に近い同原発の危険性を「時限爆弾」と表現していた。

 ただ、エンタジーが危険性を認めて折れたわけではない。合意の理由は「卸価格の低迷と操業コストの上昇」と同社広報担当のジェリー・ナッピさん(46)は語る。

 シェールガス革命による安価な天然ガス発電に押されたうえ、原発は維持管理に必要な安全対策や老朽化対策の費用がかさむ。結果として採算が合わなくなった。

ニューヨーク・マンハッタンから50キロのハドソン川上流にあるインディアンポイント原発。2021年までの閉鎖で合意されている

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 ハドソン川の環境を守るためにエンタジーと法廷闘争を続けた地元NPOリバーキーパーのリチャード・ウェブスター弁護士(55)は振り返る。「ガスが原子力と張り合えるとは、かつて予想だにしなかった」

 インディアンポイントだけではない。世界全体の25%に当たる九十九基が稼働する米国で、原発の地位低下に歯止めがかからない。

 一六年に一基が二十年ぶりに新たに稼働した一方、〇七年以降だけで五原発の計六基が閉鎖。さらにインディアンポイントを含む九原発計十二基が運転停止を前倒ししたり、運転延長を見送ったりする計画だ。

 米投資銀行ラザードの推計で、一七年の電源別発電コストは、一メガワット時当たり原子力の一四八ドルに対し天然ガスは六〇ドル。一一年と比べ、原子力は福島の事故を受けた新たな安全対策や老朽化対策で五割増。天然ガスは三割安くなった。

 シェールガス依存には、ガス価格の上昇や地球温暖化対策の後退という懸念が付きまとう。原発擁護論の根拠の一つだ。が、原発を脅かしているのは、シェールガスだけではない。

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 米国でも太陽光や風力といった再生可能エネルギーの普及が進み、発電コストは天然ガスを下回っている。米エネルギー情報局(EIA)によると、全米の一七年三月の月間発電量で、再生エネが原子力を初めて超えた。

 米NPO「憂慮する科学者連盟」でエネルギー研究部門を統括するスティーブ・クレマーさん(51)は「再生エネは天然ガスとの競争にも耐え、市場原理の中で着実に成長を遂げてきた」と指摘した。

 原発の閉鎖が相次ぐ中、排ガス抑制や雇用対策のためとして、原発を暫定的に延命させる公的支援の動きもある。それは、もはや独力では立ち行かない原発の脆(もろ)さを表している。(ニューヨーク・赤川肇、写真も)

◆エネ計画では新設・建て替え前提

 日本国内の電源構成比率は、二〇一六年度実績で原子力が1・7%。三〇年までに20〜22%に引き上げるとしている。そのためには原子力規制委員会が審査中の原発がすべて再稼働しても足りず、新設や建て替えがないと達成が難しい。だが、エネルギー基本計画では、原発増設には言及していない。

 他国については「長期戦略等の比較」として、原発の政策の方向性を一覧表で示している。米は「運転延長と次世代原子力投資が必要」。カナダは「今後十五年で二百五十億ドル投資予定」。英は「次世代原子力の開発等に向けたイノベーションを支援」。フランスは「原子力比率50%へ」とし、脱原発を示しているドイツは空欄となっている。

 

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